スノーホワイト/氷の王国 (2016):映画短評
スノーホワイト/氷の王国 (2016)ライター5人の平均評価: 2.8
おとぎ話ではなくヒーロー・アクションとして楽しむ
“スノーホワイト”とうたっておきながら白雪姫を隅に追いやって登場させないのはどうかと思うが、クリス・ヘムズワースふんするハンツマンのキャラが立っており、そのヒロイックな活躍を楽しむのが吉。
合戦のバトルも断崖からのダイブも派手に決め、タフであるばかりかユーモアを持ち合わせ、軽口さえも魅力に変える。『アナ雪』的な魔女姉妹の設定を活かしつつ、翻弄されるロマンスを織り交ぜてヒーロー・アクションを成立させた点に工夫がうかがえる。
惜しいのは、ハンツマンの昔の仲間である氷の女王部隊の描き込み不足。彼らの間の切っても切れない絆が見えたなら、本作はよりアツいアクションになりえたはずだ。
スノーホワイトの出てこない「スノーホワイト」続編
邪悪な女王ラヴェンナには実は妹がいた!しかも氷を自由自在に操る女王様だった!という「スノーホワイト」の前日談と後日談を描く続編。
ハンター・エリックと幼馴染の恋人サラの愛と勇気が、氷のような女王フレイヤの冷たい心を溶かし、ラヴェンナの邪悪な野望を打ち砕くというのが物語の主軸。作品のスケールはなかなか大きいし、スペクタクルな見せ場も充実している。大御所コリーン・アトウッドのデザインした豪華絢爛たる衣装も素晴らしい。
とはいえ、先の読めすぎる脚本のやっつけ感は如何ともしがたく、結局のところ「スノーホワイト」の続編というよりも「アナ雪」の二番煎じに見えてしまうことは否めないだろう。
製作費はアップしてるみたいなのに、物語はトーンダウン!
おとぎ話に続編が必要かはさておき、ヒット作『スノーホワイト』という柳の下のドジョウを探そうという魂胆が透けて見えるのが残念。前作で死んだはずの邪悪な女王ラヴェンナに替わる悪役設定や不倫問題で降板したヒロインじゃなくハンツマンの物語作りとさまざまに工夫したのもわかるが……。死んだ設定が覆される韓流的な流れに失笑。華麗なセット美術や衣装、最新技術で生まれた映像美でゴージャスに見せてるけど、物語がトーンダウンしてるのはごまかしようがありません。エミリー・ブラントとジェシカ・チャスティンの投入も無駄としかいいようがなく、かなり残念。
『アナ雪』の影響受けながら、女優マジックで魅了
クリステン・スチュワートがゲス監督と不倫したことで、肝心のスノーホワイト不在。クリヘム演じるエリックを主人公に迎えた奇妙な前日譚であり、後日譚。あまりに『アナ雪』の影響受け過ぎな初期設定は笑えるものの、それをシャーリーズ・セロンとエミリー・ブラントが演じると妙に説得力が増すという、女優マジックは確かにある。前作以上に、目を見張るほど美しいヴィジュアルや、それなりに高まるド派手な戦闘シーンも用意されている。ただ、あまりに展開にムリがある。ロック様版『ヘラクレス』を担当した脚本家だけに、変化球に変化を加えてしまった感が強い。そのため、よくある特殊効果マン出身監督のデビュー作に終わっている。
悪の女王ラヴェンナの美がすべてを圧倒する
シャーリーズ・セロン演じる悪の女王ラヴェンナの美の前に、すべてのものが平伏す。彼女がその真の姿を現わした瞬間、前作の前と後、双方の出来事を描くというストーリー構成上の技巧も、川の上で奇妙な軌跡を描く光といった微細な表現で異世界を描こうとする特殊効果上の演出も、みな色を失う。
今回はラヴェンナの妹で「アナと雪の女王」のエルサを連想させる氷の女王フレイヤが、エミリー・ブラントが演じて登場。ラヴェンナは金色、フレイヤは銀色を主調色に、それぞれの対照的な美しさを見せつける。
前作のサブキャラたち、ニック・フロスト演じる陽気なドワーフや、葉の上の小さな子供のような妖精たちとの再会も楽しい。