インサイダーズ/内部者たち (2015):映画短評
インサイダーズ/内部者たち (2015)ライター2人の平均評価: 4.5
韓国の凄まじい縦社会に戦慄すら覚える快作
権力者の汚れ仕事を請け負ってきたヤクザが、検察組織の底辺でくすぶるノンキャリアの若手検事と組んで、政界と財界の黒い癒着を暴こうとする。
浮かび上がるのは、ごくひと握りのエリートしか幸せになれない韓国社会の歪んだ構造だ。家柄もコネも学歴も持たない主人公たちは、どれだけ努力して成果を出しても勝ち組にはなれない。せいぜい使い捨てにされるのが関の山。そんな理不尽に耐えかねた負け犬たちが、傲慢な権力に反旗を翻すというわけだ。
随所で描かれる縦社会の凄まじさにも戦慄。人権侵害どころの話じゃない。それだけに、どんでん返しの連続で描かれる巧妙な復讐劇が実に痛快だ。胸がすくとはまさにこのことである。
綿密に練られたストーリーに目が釘付け
財閥と政治家の癒着、彼らを操る新聞社主幹(韓国版ナベツネか!?)の存在を「あるある」と思うのは、ナッツ・リターン事件などで財閥の横暴が伝えられるせいか。膿だらけの世界でトップを目指して失墜した男の復讐劇は、二転三転する展開が超スリリング。イ・ビョンホン演じる主人公はチンピラだし、彼と組む検事は学歴・コネなし。敵は国家権力を手中に納めているので、いわば負け犬がライオンに挑む図式だ。二人の戦いぶりが物語を牽引するわけで、原作漫画を大胆かつ綿密に脚色したウ・ミンホの発想に脱帽。目を覆いたくなる暴力シーンもあるが、スピーディーな展開とビョンホンはじめとする役者陣の好演で一気に見せる傑作だ。