X-MEN:アポカリプス (2016):映画短評
X-MEN:アポカリプス (2016)ライター5人の平均評価: 3.6
そこかしこから漂う'80年代テイストにニンマリ
舞台が’80年代だからってことなのか、全体的に’80年代テイストが濃厚なシリーズ最新作。なにしろテンション高まる音楽スコアは、まるっきりヘンリー・マンシーニの「スペース・バンパイア」だし、アポカリプスのキャラ造形が「ザ・キープ」の怪人ソックリなのも、きっと気のせいじゃないはず(?)。それだけでもオジサンはニンマリですよ。
異形なるものの孤独や哀しみをテーマにしたストーリーは変わり映えしないが、そのマンネリをキャラの魅力と特大なスケール感でしっかりカバー。「ゲーム・オブ・スローンズ」のソフィー・ターナーに「アメホラ」のエヴァン・ピータースと、テレビから飛び出した若手の活躍も嬉しい。
ミュータント成長の美しい環をなした(一応の)完結編
このシリーズ、スケールだけがどんどん大きくなっていく感もあるが、新三部作の完結編として足元を見失わないのはブライアン・シンガー監督の愛情が宿るからこそ。
ミュータントが抱く疎外感はシンガーがシリーズで一貫して描いてきたこと。旧シリーズでおなじみのキャラの若き日を描いた本作では、その成長ぶりが旧三部作の第一作『X-MEN』へとつながる。エピソード4へと時を超えてつながった『スター・ウォーズ』エピソード3を連想させる美しさ。
『ジェダイの復讐』を見たミュータントたちが“シリーズ3作目はサイテー!”と言っているのは、自虐ギャグか、シンガーが監督していない旧三部作3作目への皮肉か!?
原点回帰が感じられる完結編
ただでさえ、ややこしい設定で、交通整理がつかなかった前作『フューチャー&パスト』の面目躍如。過去(1980年代)に絞り、1作目のメインだったサイクロップス、ジーン・グレイ、ストームに焦点を当てるあたり、ブライアン・シンガー監督の原点回帰が感じられ、結果シリーズを観返したくなる仕上がりに。また、宿敵アポカリプス相手にチームプレイの醍醐味が味わえるほか、プロフェッサーXのハゲの謎やユーリズミックスの「SWEET DREAMS」をバックに、やりたい放題なクイックシルバーなど、見せ場は多い。ただ、シリーズ最長となる144分の尺は、ちと長いこともあり、やっぱり『ファースト・ジェネレーション』には及ばず。
最古のミュータントが世界崩壊の交響曲を指揮する
ベートーベンの交響曲第7番第2楽章が鳴り響く中、世界が崩壊していく。世界最古のミュータント、アポカリプスが指揮する世界崩壊という壮大な交響曲に目と耳を委ね、たっぷり陶酔することができる。
今回はおなじみのシリーズに、叙事詩的な壮大さをプラス。5000年前の古代エジプトから始まる物語の時間と空間が大きい。古代の人々に神と崇められたミュータント、アポカリプスの、自意識と超能力が大きい。この人物をオスカー・アイザックが史劇のように重厚に演じ、語る言葉も古代叙事詩の趣き。
このシリーズのお約束、ミュータントたちの若い時代を見る楽しさも健在。タイ・シェリダンら若手俳優のキャスティングも見事。
水戸黄門化するアメコミ映画、ただし特撮は超A級
アメコミ・ヒーロー映画なので、デジャヴュ感満載なのは否めない。さらにこのシリーズは時代を遡っているので、最強ミュータントが登場しても「プロフェッサーが殺られるぅ」なんてハラハラ感がないのが辛い。タイムパラドックスは起こせないからね。唯一の救いは、M・ファスベンダー演じるマグニートのさらなる苦悩が描かれることか。ルサンチマンとなるのも止むなしと深く同情する。といっても全体的には水戸黄門化が進んでいるので、ここは見応えたっぷりの特撮を楽しむべし。クイックシルバーの動きやアポカリプスが深化させるミュータントの変貌はもちろん、巨大ピラミッドの造形などすべてが超A級。