エンド・オブ・キングダム (2016):映画短評
エンド・オブ・キングダム (2016)ライター5人の平均評価: 3.4
勢い任せにぶっ飛ばす漫画的アクションの快感
主人公の超人的な活躍や、市街地を爆撃してホワイトハウスをアッという間に占拠するテロリストの暴れっぷりで押しまくる、漫画に徹した潔さが魅力的だった前作。そのノリを踏襲している点が嬉しい。
日本を含む各国首脳を皆殺しにしてしまうテロ描写で度胆を抜き、自国の大統領を守るために街を駆ける主人公の必死の奔走に手に汗握る。“おまえらのようなクソが何度攻撃しようと、オレたちの国は安泰だ!”という豪快過ぎるタンカに大笑いしつつ、非現実のダイナミズムを楽しんだ。
ロンドンの街中で展開するアクションは、いずれも躍動的だが、とりわけ夜間の路上で繰り広げられる銃撃戦のワンカット描写は圧巻。
これ観て一番怒るのはカナダ人かなあ。
「ロンドン橋落ちた~」みたいな軽~い原題が示すように、政治的なリアリズムなどお構いなしのB級的開き直りっぷりが天晴。敵役がアラブ系武器商人なのは、まぁこのテの映画では当たり前のことだし見逃すとして(ちなみに監督はスウェーデン系イラン人)、潔く易々とブチ殺される各国首脳の、中学生レヴェルなステレオタイプ化に苦笑。イタリア人はウエストミンスターで愛人とデート、フランス人はテムズ川でボート遊び(で日本は…)。ちょっとだけジョニー・トーを想わせる拉致現場突入長回しシーンが監督の存在証明か。A.バセットやR.フォスターやJ.E.ヘイリーといったイイ面構えの参謀陣がことごとく役立たずなのは勿体ないけど。
サミット直後の今観たい一本
ほぼ同じ設定の『ホワイトハウス・ダウン』に比べ、ハード描写を畳みかけ、“さすがは『エクスペンダブルズ』のミレニアム・フィルム!”と実感させられた前作だが、続編公開を伊勢志摩サミットに合わせた配給会社もスゴい! 原題が表わす“ロンドン(橋)落ちた”なパニックシーンから、今回も“チケット代は楽しませる感”健在。しかも、前作よりスケールがデカいのに上映時間20分減で、ジェラルド・バトラー演じるマイク・バニングのタフガイっぷりは3割増。渋滞に巻き込まれるだけの日本の首相など、ツッコミどころ満載な展開も、粗すぎるCG処理も、笑えるほど大味だが、長回しのアクションがスパイスになっているのも興味深い。
スペクタクルな見どころも満載の正統派ハリウッドアクション
「24」と「ダイハード」の美味しいとこ取りが結果的に大成功だった「エンド・オブ・ホワイトハウス」の続編。今度は英国首相の葬儀のためロンドンに各国首脳が集まる中、大規模な同時多発テロで街全体が戦場と化す。
勿体ぶることのないスピーディな展開は前作以上。舞台が広くなったことで若干緊張感は薄れたが、ビッグ・ベンやロンドン・ブリッジなどの観光名所を容赦なく破壊していく壮大なスペクタクル、街中を縦横無尽に駆け回る壮絶カーチェイスなど、とにかく旺盛なサービス精神にワクワクさせられる。ワンカット撮影による銃撃バトルも圧巻。強すぎるヒーローやタカ派色も含め、まさに正統派ハリウッドアクションだ。
この男を敵に回しちゃいけないよ!
テロリストに襲撃されたホワイトハウスをたった一人で奪還したシークレット・サビス、マイクのランボー+ジョン・マクレーン的活躍は今回もそりゃもう痛快。銃やナイフでバッタバッタと敵を殺しまくる白兵戦の完成度も高く、ジェラルド・バトラーのアクション演技にはからずしも感動。50代とは思えない頑張りだ。荒唐無稽な設定ではあるが、ドローン攻撃で一族郎党を奪われた武器商人の哀切という今どきの中近東情勢を紛れ込ませているので、西欧諸国への注意喚起になりそう。前作で大熱演したメリッサ・レオが降板したのが残念だが、アーロン・エッカート演じる大統領が戦うシーンも増え、バディ・アクションとしての見応えもあり!