ザ・デクライン (1981):映画短評
ザ・デクライン (1981)ライター2人の平均評価: 4.5
'70年代末L.A.ミュージックシーンの熱気を今に伝える
L.A.ロックシーンの推移をリアルタイムに捉えたドキュメンタリー三部作の第一弾は、アメリカン・ハードコア/パンクの誕生するその瞬間をカメラに収めている。
‘79年~’80年といえば中西部の保守層による大バッシング運動を契機にディスコ・ブームが衰退し、大都市の黒人若年層によるストリート発祥のヒップホップ/ラップが興隆を始めた時代。そうした背景を踏まえれば、いろいろなものが見えてくることだろう。
溢れんばかりの生のエネルギー、社会への怒りや不満などを音楽にぶつける。今も昔も変わらぬロックキッズの姿がそこにある。もはや若者とは言えない筆者としては、そんな彼らを取り囲む大人たちの目線が興味深い。
続けざまに『BLACK FLAG LIVE』も観たくなる!
日本では86年に初公開した傑作の再上映。79年~80年のL.A.パンク・シーンを捉えたものだが、なんとロン・レイズ(Vo.)時代のブラック・フラッグや、「第二のシド・ヴィシャス」とでも言うべきジャームスの故ダービー・クラッシュ、パンク・ファンジン『スラッシュ』編集部の様子など、USパンク~ハードコアのお宝満載!
初期パンクから移行し、アンダーグラウンドで過激に先鋭化していった時期の刹那的な瞬発力が収められているが、何より100分丸ごと激レア映像って事自体に痺れる。監督のスフィーリスが明言しているように『ザ・デクライン』三部作は社会学的な視座が強いが、この第一作は音楽的な記録としても超貴重だ。