エル・クラン (2015):映画短評
エル・クラン (2015)独裁政治の縮図とも言うべき犯罪ファミリーの衝撃的実話
平凡だが仲睦まじい中流一家が、実は家族ぐるみで身代金目的の誘拐殺人を繰り返していた。’80年代のアルゼンチンで実際に起きた事件の映画化である。
己の独善的で身勝手な正義のため犯罪に手を染める父親=君主、洗脳され絶対服従を強いられていく息子たち=役人、無意識のうち見て見ぬふりを決め込む娘たち=庶民、そして愛情の名のもとで男たちの悪事を黙認してしまう母親。これは、独裁政治の形成過程とその構造を、ファミリー・ドラマに置き換えて描いた作品だとも言えよう。
そして、その背景として軍事独裁政権に蹂躙されたアルゼンチン近代史の悪夢が浮かび上がる。主人公たちのその後を伝えるエンドクレジットにも戦慄だ。
この短評にはネタバレを含んでいます