エヴォリューション (2015):映画短評
エヴォリューション (2015)ライター2人の平均評価: 4
光に彩られて揺らぐ、あまりに美しい希望or絶望
未来に何が待つのかわからない漠然とした恐怖と、性的なものへの不安や憧れ。子どもが抱える、そんな2つの要素を柱にして映像詩を展開させる。
海面・海中の光の揺らぎをイメージ的にとらえたビジュアルが何より目を引く。それは子どもたちの心の揺れの象徴か。ドラマに挟み込まれたこれらの映像美は、酔えるだけでなく思索をも促す。
前作『エコール』もそうだったがアザリロヴィック監督は、囲い込まれた世界から抜け出したい子どもの願望を、ファンタジー風に描き出す。行く先に待つのは希望か、絶望か。結末に何を見るかも、観客の感性によって異なってくるだろう。いずれにしても印象度は強烈。凄い。
この海は死の匂いがする
「エコール」で"少女というもの"を描いた女流監督が、本作で描くのは"少年というもの"。少女たちは森に潜んでいたが、少年たちは海辺に住んで、海と陸を行き来する。
海は生命を育むはずなのだが、この海は死の気配が濃い。色も青ではなく、深い緑色。海の底に近づくにつれて光の量は減り、色彩が無くなる。光が薄れると影もぼやけて、あらゆる輪郭が曖昧になる。生と死の境界線も失われていく。緑色の海の中で、少年たちの白く薄い身体と、海に棲息する生物の奇妙な形との区別も曖昧になっていく。ここでは少年たちの傍にいる成人女性の形をした生物は、母親ではない。監督独自の少年論が、奇妙な夢のようなイメージで綴られていく。