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彼らが本気で編むときは、 (2017):映画短評

彼らが本気で編むときは、 (2017)

2017年2月25日公開 127分

彼らが本気で編むときは、
(C) 2017「彼らが本気で編むときは、」製作委員会

ライター2人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.5

山縣みどり

社会や家族の多様化が手に取るように理解できる

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

マイノリティへの偏見や育児放棄というハードな題材を扱うが、小学生女子の目というフィルターを通したのが荻上直子監督流。叔父の恋人がトランスジェンダーのリンコと知った少女の驚きやリンコの母性と優しさに癒される過程、リンコへの偏見に傷つき怒る心模様と全ての局面で彼女に共感する。LGBTという言葉が市民権を得た程度で、養子縁組も浸透しない日本社会で多様化と訴えても机上の論理となりがち。でも実際に映像でマキオ&リンコのようなカップルを見ると多様化の意味が伝わり、家族形態も旧弊依然としたものである必要はないとわかるのもいい。荻上作品の魅力の一つでもある自然な台詞回しが効いていることは言うまでもない。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

『牝猫たち』の「貧困」と、本作のリベラリティを併せて考えたい

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

橋口亮輔監督の偉大な先駆作『ハッシュ!』から15年、これは極めて貴重な「ある一歩」だ。LGBTを起点とし、家族の枠組みを再考するという世界の先端的な主題に、日本の土壌を踏まえてタッチした意欲作。子育て中の身としても染みる部分が非常に多い。

世間の同調圧力に対する反骨の姿勢は『バーバー吉野』から一貫している荻上直子監督だが、「怒り」を対象化し始めた事が重要な成熟と刷新ではないか。個人的に最も感じ入ったのは「母である前に女」と主張する未熟な大人のミーイズムをどう扱うかで、この映画も慎重になった部分だと思う。役者陣は最高。特に生田斗真は確実に彼の代表作だろう(『土竜の唄』と併せるとさらに凄い!)。

この短評にはネタバレを含んでいます
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