アサシン クリード (2016):映画短評
アサシン クリード (2016)ライター4人の平均評価: 2.5
ファスが運動神経抜群だったら少しは面白くなったかも。
景はSFファンタジーとしてアリだが、遺伝子記憶を呼び覚ます画期的な機械やアサシン教団の末裔が今なおアサシンというDNAレベルの設定が穴だらけ。マスター・アサシンの遺伝子を受け継ぐ主人公だけアサシンの自覚がないのはなぜ? いきなり覚醒しちゃうのも謎。最大の欠点は、マイケル・ファスベンダーのアクション演技。超絶ダメダメで、パルクールに長けたスタントチームの頑張りが台無しだ。本人がやる気満々で制作に乗り出した作品らしいけど、シリーズ化ならなかったのも納得。マリオン・コティヤールもきっと出演を後悔してるね。
壮大な歴史の謎に現代社会への警鐘を込めたエンタメ大作
元ネタのゲームを全く知らないので比較は出来ないものの、異端審問の嵐が吹き荒れた中世スペインより脈々と続くテンプル騎士団とアサシン教団の戦いを軸としたストーリーには、宗教間の対立やファシズムの台頭によって混迷する国際情勢の今が投影されていることは間違いないだろう。そういう意味では、時代性の顕著な作品だ。
建物や道路が複雑に入り組んだヨーロッパの街を縦横無尽に駆け巡るアクロバティックなアクションそれ自体は何ら珍しくないが、しかしそれをルネッサンス期の街中で繰り広げるというのはなかなか新鮮。とはいえ、あくまでもシリーズ序章に過ぎないこともあって、不完全燃焼なストーリーは如何ともしがたい。
アホな設定がアホにみえない説得力
たまたま『アルタード・ステーツ』でも観た中学生が勢いで書いたようなプロットのゲームを映画化。とはいえ、製作も兼ねたマイケル・ファスベンダーは、『マイティ・ソー』のケネス・ブラナーの線を狙ったか、『マクベス』を撮ったジャスティン・カーゼル監督を抜擢。マリオン・コティヤールまで続投してることで、妙に崇高な雰囲気が漂う。主人公のカラム・リンチは映画オリジナルという親切か、不親切か分からん配慮までされているが、パルクールを取り入れたアクションと売りである垂直落下のイーグルダイブは、かなりの力の入れよう。大幅リテイクがあったとはいえ、あくまでも3部作の序章にすぎないので、そこは覚悟して挑むべし。
落下するとき、暗殺者は美しい図形になる
落下の美学。フードを被った暗殺者が、高い尖塔から飛び降りる時、太陽を背にしたその姿は、空中でひとつの美しい図形になる。その形が美しい。昨今のアクションは実在の格闘技を用いた実践度重視の演出が多いので、こうした身体の姿勢の美しさを重視したアクションが新鮮。肉弾戦でも、敵を刺した後で一瞬静止した時の姿が美しい。
それを際立たせるのが、ルネッサンス期の15世紀イタリアという背景と、光ではなく闇の中で任務を遂行するという暗殺者の信条だ。アルハンブラ宮殿でも撮影された古風な絵画のような世界、わずかな光が差し込むだけの暗い空間で、暗殺者は静かに動く。その舞踏のような動きが美しい。