レゴバットマン ザ・ムービー (2017):映画短評
レゴバットマン ザ・ムービー (2017)ライター4人の平均評価: 4.5
『ダークナイト』の呪縛を笑いながら解き放つ
会社ロゴをツッ込みまくるオープニングから、前作『LEGO(R)ムービー』超! このテンション、このセルフパロディ感、そして子供ダマシと見せかけての大きなお友達向け感。あの『ザ・マペット』『ルーニー・テューンズ:バック・イン・アクション』に、めちゃ近い。しかも、『ダークナイト』の呪縛を笑いながら解き放つと同時に、80年近い「バットマン」史を総括。おまけに、DCやワーナーの枠を超え、権利的に大丈夫かと心配してしまうほどのキャラまつり状態。まさかの『14アマゾネス 王女の剣』オマージュな人間橋が飛び出すクライマックスまで、観てる方はひたすら疲れるが、これを参考に東映や円谷でも一発やってくれませんか?
アホなギャグとパロディのつるべ打ちでお腹いっぱい!
可愛いレゴキャラたちによるアホなギャグをこれでもかと詰め込んだ『LEGOムービー』スピンオフ。ノーラン版からバートン版、さらには’60年代のテレビ版から’40年代の連続活劇版に至るまで、あらゆる『バットマン』シリーズのパロディがズラリと並ぶ。
加えて、悪者軍団に『ロード・オブ・ザ・リング』のサウロン、『ドクター・フー』のダレク、『大アマゾンの半魚人』の半魚人などなど、あれ、DCと全然関係なくない!?というキャラまで大挙登場する悪ノリぶりが最高。『グレムリン』×『ミステリー・ゾーン』のパロディなんか芸が細かい!バットマンと悪者がコインの表裏だという核心を突く辺りの切れ味も抜群だ。
実は正攻法の"バットマン論"だったりもする
爆笑コメディでありつつ、実は正攻法の"バットマン論"。あ、それを言っちゃあ……と普通はちょっと言えないアブナいネタも、レゴ(R)のキュートなフィギュアたちならOK。バットマンとはどんな存在なのかをめぐる鋭い考察が、カラフルなコメディの形で描かれていく。とくにバットマンとジョーカーの関係の真髄を描く名シーンは必見。思えば「LEGO(R)ムービー」も一つのフィクション論だった。このシリーズはいつも深い。
さらにアメコミ以外のレゴ(R)の人気キャラも続々。「ハリー・ポッター」「ロード・オブ・ザ・リング」「ドクター・フー」「オズの魔法使」など画面の隅まで見逃せない。
ひたすら楽しい!
『LEGO® ムービー』のファンなので期待値を上げていったが、もっと楽しかった(笑)。黒画面のくだらない薀蓄、ワーナーやDCのロゴマークが出てる時もずっと喋りっぱなしの前口上から心がなごむ。そしてレゴのキャラクターが(ジョーカーさえも)みんなかわいい。特にバットマンの「孤独」は秀逸で、ディナーをレンジでチンしたり、萌えポイントがいっぱいなのだ。
優れたパロディ作品の常として情報量はすごく多い。バートンやノーラン時代だけでなく、コメディ系TVシリーズ『怪鳥人間バットマン』(総体的にはこれに近い)まで「バットマン史」を遡るが、掘り方が少しも押しつけがましくない。頭カラにして完全OKの傑作!