牝猫たち (2016):映画短評
牝猫たち (2016)ライター2人の平均評価: 4.5
“日本のハーマン・ヤウ”、ついに本領発揮!
実録犯罪モノのイメージが強い白石和彌監督だが、じつはしたたかでタフな女性描写が、やたら巧い。そんな“日本のハーマン・ヤウ”が、人妻系デリヘリを舞台にするとなれば、水を得た魚状態である。しかも、現代社会の闇を描きながら、妙ないかがわしさやお世辞にも巧いといえない芝居、お笑い芸人やゲストの使い方、アフレコのズレに至るまで、個人的に理想的なロマンポルノ要素が満載。おまけに、『シンゴジラ』に対する日活からの回答やら、『太陽を掴め』より遥かに魅力的な吉村界人まで詰まっており、リブート・プロジェクト全5作だけでなく、白石監督作でもベストの仕上がり! ただ、猫たちの鼓動を肌で感じられる池袋で観たかった!
社会のボトムから現代日本の哀歓を立ち上げる傑出の84分
これまでの白石和彌監督作の中で一番好き。言わば『ロストパラダイス・イン・トーキョー』の発展形か。ルポルタージュ的、社会問題の総目録的な内容だが、それを寓話的な感触に落としこむ際にロマンポルノというお題の枠組みが絶妙に機能しているのだ。田中登『牝猫たちの夜』は新宿だったが、これは池袋。ロケも素晴らしく、「いまの日本」を伝える風景がよく選ばれているなと思う。
ハリウッド映画や海外ドラマの働く女性群像を反転させたとも言える作劇も秀逸。底流するのは視座の「優しさ」。特に迫るのはシングルマザー結依のエピソードで、客役のとろサーモン村田秀亮が最高。リアルで色気もある「名優」ぶりにびびったよ!