NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム (2016):映画短評
NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム (2016)ライター4人の平均評価: 3.3
ユーチューバー×SNSの延長線上に、今にも出現しそうなリアル
ここで描かれるオンラインゲームは、ユーチューバー×SNSの延長線上として、今にも出現する可能性を秘めている。プレイヤーが興味本位のウオッチャーの要求に応えて挑めば、スマホが実況カメラとなり、自己顕示欲を満たす上に賞金が伴うシステム。心地よい刺激に現実感を見失い、自我は薄らぎ、危うい虚構へと急速に落ちていく感覚が、極彩色と快活な音楽によってスピーディーかつリアルで、近未来を透視する。ミッションが過激化し、生死を懸けた領域へ及ぶプロットは想定内。しかし、旧来のモラルによって収束させようとする終盤は、酷薄なネット社会の現実に拮抗しているとはいえない。匿名性の闇への斬り込みの甘さが惜しい。
スタイリッシュに、軽やかに、世に物申〜す!
今の世に、生まれるべくして生まれた作品だ。
ネット依存も、無防備に個人情報を投稿する危険性も、分かっちゃいるけどやめられないのが私たち。
それを”人のふりして我が振り直せ”と言わんばかりに、行く末を知らしめてくれる。
もっとも注目の若手を起用して描かれる米国のティーンの生活は羨望を抱きそうなくらいオシャレ。
さらに参加型ゲームは、観ているこちらも興奮するほどスリリングかつ一攫千金のチャンスもあって確かに魅力的。
世に警鐘を鳴らしつつ娯楽としても成立させる絶妙なバランスは、さすがハリウッド。
ゲームを真似する輩も出てきそうではあるが…
その際、映画のせいなんて野暮な声が上がらないことを願いたい。
ネット社会に警鐘を鳴らすメッセージ性が明快で分かりやすい
地味で目立たない女子高生が、視聴者の出す指令をクリアすることで得点を稼ぐライブ中継型ネットゲームに参加して一躍人気者になるものの、やがて課される指令がどんどんと過激かつ危険になっていく。
有名になって注目されることの快感に溺れていく若者たち。ウェブの匿名性をいいことに勝手な要求を突き付け、モラルの感覚が麻痺してしまう無責任なネット住民たち。現代のネット社会を取り巻く諸問題に斬り込んだサイバー・サスペンスといったところか。
先の展開は簡単に読めてしまうものの、愚直なくらいテーマやメッセージに忠実なストーリー構成は、その単純明快な分かりやすさも含めて好感が持てる。
この浮遊感とスピードはネット感覚
ネット世界に没入している時の状態を映像化すると、この映画の色と速度になる。地に足が付いていない感じ、自分のすることが現実と遊離している感じ、時間の過ぎる速度が現実とは違う感じ、ネットユーザーが見ている自分を実際の自分と錯覚してしまう感じ。そういう感覚を、自然界にはないパープルとブルーのネオン色の色彩、クリックやスワイプ一つでガラリと世界が変わるネット画面感覚の細かなカット割り、急速に変化するストーリー展開によって、鮮やかに映像化。パソコン内部から登場人物たちを映すカメラ視点もユニーク。ヒロインが体験する、天国への急上昇と地獄への急降下は、たった一晩で起きる。その速度感もいい。