アウトレイジ 最終章 (2017):映画短評
アウトレイジ 最終章 (2017)ライター3人の平均評価: 3.3
裏社会の浅ましき権力争いは、さながら日本の政治の写し鏡
殺伐とした非情な現代ヤクザ社会の抗争劇を、徹底したバイオレンスで描く人気シリーズだが、今回の最終章では全編にドライなユーモアと詩情性も貫かれており、『ソナチネ』をはじめとする往時の北野作品を彷彿とさせる。そういう意味では、前2作よりもマイルドになった印象だ。
騙し騙され、裏切り裏切られ、義理も人情も信条もない裏社会の権力争いは、まるで現代日本の政界さながらの浅ましさ。そこには5年ぶりのシリーズ復活に込めた意図も垣間見える。とりあえずストーリー自体は比較的単純明快だが、多岐に渡る複雑な人間関係を理解するうえで過去作のおさらいは必要であろう。
かつての北野映画の虚無感が漂う、悲哀に満ちたアナログなあがき
過去2作の組織抗争映画とは趣が異なる。冷ややかな現代社会における駆け引きと裏切りの連鎖の果て、滑稽かつ陰惨な“殺し方大図鑑”と化したシリーズ。その最終作は、たけし扮する大友個人の内面に端を発し、冒頭から死臭が立ち込めている。かつての北野映画の虚無感だ。もはや絶滅した「義」や「情」のようなものを行動原理に仄かに感じさせるが、これみよがしに主張はしない。核にあるのは、日韓裏社会の大物フィクサー(金田時男)との関係性。クライマックスの銃撃戦は、こんな醜悪な世の中では、もはや取り戻すことなど不可能なものにこだわり、組織の論理を破壊し尽くそうとするアナログな個人のあがきとして、悲哀に満ちている。
とにかくピエール瀧が美味しい!
明暗分かれた関東「山王会」と関西「花菱会」に、暗躍する韓国の張グループが絡む。前2作で一匹狼的だった大友が、常に手下の市川と行動を共にする姿に、どこか違和感もあるが、そのぶん大森南朋とのバディ感を楽しめば、問題なし。主要キャスト3人の聞き取れないセリフも、リアルさが引き立つ効果になっているが、全体的にコメディ寄りであり、そこを一手に引き受ける変態ヤクザ役のピエール瀧が儲け役だ。『ソナチネ』な展開も含め、正真正銘の北野映画だが、派手なクライマックスもありながら、「まとめました」感が強く、新キャラで大杉連や岸部一徳が出てきても、今さら感は否めない。結果、ファンとしてはモヤモヤが残る仕上がりに。