人類遺産 (2016):映画短評
人類遺産 (2016)まるで未来から届いた「この惑星」のフォトブック
雨に打たれる自転車置場。インフラの整った地方都市が、そのまま無人の廃墟と化している。日本と判る風景だが、特定の地名は明示されない。以降も人間の居ない、ガランとした世界の至る所が、構図をかちっと決めた高強度の画でワンショットずつ映し出されていく。
イメージとしては“スライド写真集”。だがその中には「時間」と「動性」が確かに記録されている。既に我々はディストピアSFの中に住んでいるのか、との感覚に襲われるが、戦慄よりむしろ、どこか癒される静謐さに満ちている。『いのちの食べかた』『眠れる夜の仕事図鑑』のゲイハルターが独自の形式を極め、映写後も永遠に続くかのような一本を作った。これは傑作だろう。
この短評にはネタバレを含んでいます