台北ストーリー (1985):映画短評
台北ストーリー (1985)社会の変化に翻弄される男と女の苦悩と哀しみ
高度経済成長期にあった’80年代半ばの台北で、急激な社会変化に翻弄される男女カップルのすれ違いが描かれる。これまで日本では滅多に見ることの出来なかった台湾ニューシネマの名作、ようやくの劇場公開だ。
全編に漂うのは失われゆく時代へのノスタルジーだ。未来へ向けて人生を切り拓こうと模索する女と、過去に固執するあまり袋小路に追い詰められていく男。それぞれの苦悩と哀しみを見つめるエドワード・ヤン監督の視線は慈しみに満ちているが、しかし同時に厳しくもほろ苦い。
詩情溢れるスタイリッシュな演出も魅力。役者ホウ・シャオシェンの朴訥とした佇まいは、主人公のどうしようもなく不器用な生き様を体現して見事だ。
この短評にはネタバレを含んでいます