トンネル 闇に鎖(とざ)された男 (2016):映画短評
トンネル 闇に鎖(とざ)された男 (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
パニック映画というより社会派の人間ドラマ
崩落したトンネルに閉じ込められた男性のサバイバルと救助隊の物語と聞くと『海猿』的な展開を想像したが、全然違った。救助隊が必死に活動することで次々と明らかになる手抜き工事や政治家の事なかれ主義。特に現場に登場する女性政治家の描き方が皮肉たっぷりで、セウォル号事件時の朴槿恵元大統領を彷彿させる。「一人の命を救うのに税金を無駄にするな」なんて大衆の声に流される被害者無視の政治判断はまさにポピュリズムの弊害だろう。怖い、怖い。ハ・ジョンウとオ・ダルス、ペ・ドゥナ、キム・ヘスクという信頼できる役者が揃っているし、実在のトンネルを使った大規模撮影も迫力十分。韓流の勢いは衰えないね。
オ・ダルス、いい味出してます。
トンネル崩落に巻き込まれ、車に閉じ込められた男を描いたパニックムービーだが、韓国映画特有の骨太な人間ドラマもしっかり魅せてくれる。残量78%の携帯電話に、水のペットボトル2本。そして、娘への誕生日ケーキといったアイテムを巧く使った展開のなか、最大の見どころは『暗殺』に続く、ハ・ジョンウとレスキュー隊長を演じるオ・ダルスとの掛け合い。互いの存在が見えない状況のなか、芽生えていく男の友情は熱くもアリ、可笑しくもアリ。ただ、あまりに前半飛ばし過ぎたことで、後半の息切れが目立ってしまったのは否めない。もうひと捻りほしかった感もあるし、ぺ・ドゥナを妻役に配したことでのモノ足りなさも若干ある。