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ブランカとギター弾き (2015):映画短評

ブランカとギター弾き (2015)

2017年7月29日公開 77分

ブランカとギター弾き
(C) 2015-ALL Rights Reserved Dorje Film

ライター4人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.3

中山 治美

祝!新藤兼人賞・金賞受賞

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

映画賞シーズンだが本作の扱いは難しい。
日本人監督だが製作は伊。
なので外国映画に分類されてしまう。
そこに新人監督対象の新藤兼人賞受賞の朗報。
逆に言えば日本人離れした視点と作風が本作の最大の魅力でもあるのだが。
世界を放浪してきた監督ならではの社会を見つめる視点が良い。
フィリピンのスラム街で生きるために罪を重ねてきた少女が、盲目のギター弾きとの出会いで変わる。
現地に溶け込み、2人から芝居を超えた感情を引き出した手腕は高く評価されるべきだろう。
何より、スラム街のイメージを覆すような暖色系のトーンに統一した映像が美しい。
日本の自主映画監督が学ぶべきものが、本作にはたくさん詰まっている。

この短評にはネタバレを含んでいます
清水 節

名も無き人々の希望と映画の可能性を信じる一篇の清涼な映像詩

清水 節 評価: ★★★★★ ★★★★★

 マニラの路上で暮らす孤独で純情な少女が、盲目のギター弾きとの心の交流を介し、「カネの万能性」をめぐる、ある真実に気づく。テーマはシンプル。ヴェネツィアの全面バックアップによる長谷井宏紀の長編は、名も無き人々の希望と映画の可能性を信じる一篇の清涼な映像詩だ。すでにクラシカルな名画の味わい。歌声も披露するヒロインを含め、出演者にプロの俳優がいないフィクションであることを信じられぬほどドラマティック。湿り気と暗さを一切感じさせず、スラムの苛酷な現実を前に、生命力が漲っている。出会いを大切にし、市井の人々を優しく見つめ、人間的な魅力を引き出そうとする初々しいキャメラアイに、心が洗われる思いがする。

この短評にはネタバレを含んでいます
森 直人

若き奇才から、優しき俊英へ

森 直人 評価: ★★★★★ ★★★★★

前衛ゴリゴリの駒場寮ドキュメンタリー『W/O』(00年)以来、不意打ちのようにお目に掛かった長谷井宏紀(林文浩の名著『外道伝』では「アートバカ」として紹介)の新作。かつてのイメージとは大きく異なる平易な作風に驚かされた。これは完全に良い意味での成熟だろう。余計な手を加えず、ただ世界に耳を澄ますかのように、アンプにつないだアコギの音も、路上の子供達のざわめきも、すべてが豊かな人間味を持って響いてくるのだ。

お話はシンプルな枠組みだが、しかしその中にマニラの街の多元性が生々しく記録されている。クストリッツァからの賞賛を裏返せば、彼とは全く違った方法で同じことを描いている映画と言えるかもしれない。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

弱者の孤独と哀しみに寄り添う優しさが魅力

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 舞台はマニラ。主人公は路上で暮らす孤児の少女ブランカ。テレビで恵まれない子供を養子にするセレブを見た彼女は、子供が買えるならお母さんだって買えるはず!と考え、物乞いや窃盗で稼いだ金を手に母親探しの旅に出る。
 その導き手となるのが、路上で日銭を稼ぐ盲目のギター弾きの老人。ストリートチルドレンを取り巻く残酷な環境をシビアに描きながらも、心優しい老人との交流を通して初めて愛情の意味を知る少女の成長が、チャップリンやフェリーニを彷彿とさせる詩情とペーソスを交えて綴られる。
 弱者に寄り添う長谷井宏紀監督の眼差しはどこまでも優しく、暖色を強調したカメラで捉えられるマニラの街も猥雑でありながら美しい。

この短評にはネタバレを含んでいます
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