クロス (2017):映画短評
クロス (2017)罪を犯した人間に幸せになる権利はないのか
かたや殺人という犯罪の十字架を背負い、日の当たらない場所で一人黙々と贖罪に生きる女。もう1人は、その十字架から目を背けて封印し、都合よく自分を正当化して幸福な家庭を手に入れた女。まるで対照的な2人の女が、1人の男を巡って激しい火花を散らせる。
サイコロジカルな愛憎サスペンスの体裁を取りつつ、犯罪加害者の深層心理に鋭くメスを入れたストーリー構成は素晴らしく秀逸。恐らく、多くの観客は前者に肩入れするかもしれないが、しかし後者の身勝手さも決して否定はできないだろう。それは人間の自然な防衛本能でもあるからだ。果たして、罪を犯した人間に幸せになる権利はないのか。深く考えさせられる作品である。
この短評にはネタバレを含んでいます