ジュリーと恋と靴工場 (2016):映画短評
ジュリーと恋と靴工場 (2016)ライター2人の平均評価: 3.5
グローバル資本主義に物申すJ・ドゥミ風フレンチミュージカル
地方都市で働き口が少ないのは世界中どこも同じ。25歳で職なし彼氏なしのヒロインは、ようやく老舗靴ブランドの下請け工場の仕事にありつくものの、利益第一主義の本社社長が工場の国外移転を決めたことから、仲間の女性従業員たちと共に職場を守るべく立ち上がる。
グローバル化の波によって伝統技術が失われつつある現代社会を風刺した作品だが、それをジャック・ドゥミ風のカラフルでハッピーでセンチメンタルなミュージカル映画として仕上げてしまったところが異色。ミシェル・ルグランを彷彿とさせるレトロでお洒落なナンバーの数々も魅力だし、主演ポーリーヌ・エチエンヌの素朴な可愛らしさと味のあるヘタウマな歌唱も素敵だ。
戦う女たちがゆる〜く歌ってゆる〜く踊る
ゆる〜く歌ってゆる〜く踊る、力の抜けたミュージカルシーンが心地よい。扱っているモチーフは、就職難、リストラ、男女差別と、かなりヘヴィなのだが、それがゆる〜いミュージカル仕立てで描かれる。工場で働く女性たちは年齢もバラバラで年配者も多く、ルックスも性格も個性派揃い。そんな彼女たちが一緒に踊る光景は、振り付けは同じだが、実際の動きは同じではない。それぞれが他人に合わせるのではなく、自分の個性と体力に合わせて動く。ストーリーは問題の解決とはあまり関係なく、主人公のキャラは必ずしも共感系ではないが、みんなが同じようでいて各自なりに踊る脱力系ミュージカルシーンが、不必要な肩の力を抜いてくれる。