アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー (2018):映画短評
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー (2018)ライター5人の平均評価: 4
サノス視点で見返すと。
ちょうど2年前の公開。
登場人物と情報量の多さをサノスを軸に展開することでルッソ兄弟からしっかりとまとめ上げた大締め前半戦。
後編の『エンドゲーム』と連なることを前提になっていることもあって『スター・ウォーズ帝国の逆襲』と重なる部分もある一方で、アベンジャーズの見事なまでの敗北の物語にもなっている。
モラルをただヒーローが集結するお祭りの話だった『アベンジャーズ』に大きな深みが加わった瞬間の映画となっています。
MVPはガーディアンズ!
シリアスな展開に突入したことで、ヒタヒタと「DCEU」特有のダークテイストが強まりつつあったが、新加入となった「ガーディアンズ」のおかげで、お笑いテイストは保守。まるで、プロデューサーに入ってるジェームズ・ガンが演出しているようなツボを得た演出に終始ニヤニヤさせられる。さらに、誰もが納得するエンタメのお手本というべき、構成の巧さによるキャラ捌き。ワカンダ戦のスペクタクル感は、『ブレイブハート』を思い起こさせてくれるほどだ。そして、インフィニティ・ストーンを揃え、成金ババアのような指回りになる強すぎるアゴ割れ親父こと、サノス。葛藤シーンは若干ダレ気味だが、それはそれで、いいスパイスになっている。
R・アルトマン的手法で包み込んだヒーロー群像劇が示唆するもの
10周年19作目のマーベル映画集大成。石を手に入れ宇宙を制圧する物語、多義性をもった最強最悪のラスボス造形。構造はシンプルだが、“一見さんお断り”にならぬよう60超の膨大なキャラを整理しきれたとは言い難い。ただし各エピソードが顔見世程度にならぬよう配慮するルッソ兄弟が、ロバート・アルトマン監督作品を志向した作劇には好感を抱いた。それはいくつもの混沌とした状況を放り出し積み重ね、より大きな苦悩を醸成する群像劇の手法。つまり“訪れるあの瞬間”とは、『ショート・カッツ』においてキャラ全員に共通体験を与え全てをひとつに包み込むための「地震」であり、スーパーヒーローたちのその後を夢想させる手がかりだ。
いろいろスゴイが脚本がスゴイ
脚本家コンビに拍手喝采! この2人、クリストファー・マルクスとスティーヴン・マクフィーリーは、「キャプテン・アメリカ ザ・ファースト・アベンジャー」からキャプテン・アメリカ3作の脚本を手がけつつ、「マイティ・ソー/ダーク・ワールド」とTV「エージェント・カーター」の脚本も書いてきたが、それにしても。これだけの数のヒーローたち各自に、個性を活かした場面を用意。うわ、このキャラにその表情をさせる? それを言わせる? と嬉しい驚きに何度もヤラレてしまう。そのうえ、悪役サノスの複雑な性格の一端まで垣間見せてくれるとは。来年5月全米公開のシリーズ最新作の脚本も、この2人。次へのネタ振りも万全だ。
期待には応える!史上最多ヒーローの究極と限界
これだけ多くのキャラクターに、できるだけ活躍と性格描写をまんべんなく割り振り、戦いの見せ場を巧妙に行き来させる。冒頭からその工夫とテンポ、勢いは冴えまくっている。オールスター映画の醍醐味だ。しかしその「数」は、ときに観る側の許容範囲を超えてしまい、秒速レベルで披露される離れ業、得意テクニックの乱射が、最重要アクションのカタルシスを弱めてしまった気も……。ただ、作品の条件を考えれば、これは避けられない運命であり、ファンの期待感には十分応えている。
悪役サノスの心の闇にも迫る展開は、うまくいっているかどうかは別にして、好印象。断言できるのは「一刻も早く続きを観たい」という欲求が湧き上がることか。