ザ・ウォール (2017):映画短評
ザ・ウォール (2017)ライター2人の平均評価: 3
イラク最恐スナイパーの痛快戦術
今やトム・クルお抱え監督の一人になったダグ・リーマンだが、デビュー作から追いかけてきて、ここまで自身の色がない監督も珍しい。出世作『スウィンガーズ』のような野郎の会話劇から始まる本作も、今の技術を考えれば90分1カット(風)で撮ってもおかしくないシチュエーションものだが、恐ろしいほど割りまくる。しかも、『ボーン』シリーズを立ち上げた監督にしては、どこか緊迫感に欠ける。ただ、カモフラージュからなりすまし、ポーの「告げ口心臓」の引用と、イラク最恐スナイパー“死の天使”がガレキの山から繰り出す戦術は、かなり痛快で、それに応戦するアーロン・テイラー=ジョンソンの一人芝居を楽しむだけなら何の問題もなし!
一種の体感映画、この90分をどう味わうか
場所は1カ所だけ、登場人物は3人のみ。しかも場所は灼熱の砂漠。そういう90分を映画館で味わう、一種の体感映画になっている。
イラクの砂漠。アメリカ兵2名が、姿の見えない狙撃者に狙われ、瓦礫の壁の背後に隠れる。敵はどこにいるのか。兵士たちは生き延びることができるのか。そういう物語でも、通常の映画なら、別の場所で起きていることを描いたり、回想シーンを入れたりして、画面にバリエーションをつけるが、この映画はあえてそれをまったくしない。画面にはただ、ジリジリと太陽が照りつける砂漠と、小さな壁、そこにいる汚れた2人の兵士が描き出されるのみなのだ。