友罪 (2017):映画短評
友罪 (2017)ライター4人の平均評価: 3.8
『ヘヴンズストーリー』延長戦
犯罪被害者と加害者、その家族たちの終わらない苦悩を『ヘヴンズストーリー』で壮大なサーガに仕立て上げた瀬々監督にとっては、挑まねばならぬ題材だったのだろう。
今回フォーカスしたのは広く加害者。
『ヘヴンズ〜』では妻子を殺害された夫が「家族を殺された人間は幸せになっちゃいけないのかな?」と呟くが、本作では加害者とその家族は幸せになってはいけないのか?と問う。正解のない答えを観る者にも探らせる。
ただ『ヘヴンズ〜』が4時間38分かけて描こうとした同等の群像劇を、その半分以下の時間で表現するにはもう少し登場人物とエピソードの整理が必要だったのではないか。欲を言えば主演2人の内心をもっと見たかった。
瑛太vs生田斗真ーー贖罪の念を背負う者たちが生きる意味を問う
かつて重い少年犯罪を起こし社会に出た人物が、自分の身近にいる者だとしたら…。記憶の奥底に眠る世紀末前後の禍々しさの残滓が潜伏している事実を突き付けられる。犯人探しが目的ではない。元少年犯・瑛太と元ジャーナリスト・生田斗真の中心に、誰もが贖罪の念を背負っている。その意識がいつどんな形で噴出し、周囲を巻き込んでしまうのかという不穏さが全編を覆い、重苦しさを引きずりながら生きる意味を問いかける。感傷やヒューマニズムは通用しない。『64 −ロクヨン−』的なエンタメ性には欠けるが、瀬々敬久が追い続ける「犯罪」をモチーフに社会の闇を炙り出す群像劇として『ヘヴンズ ストーリー』以来の成果を挙げている。
今だからこそ、挑むべき一本。
センセーショナルな設定ながら、若干設定に無理もあった薬丸岳の原作を、瀬々敬久監督自らが見事に脚色化。絶妙な距離感で繰り広げられる群像劇のなか、主軸ではない佐藤浩市演じるタクシー運転手とその家族のエピソードを際立たせたのは成功だろう。しかも、コミカルなキャラが先行しがちだった瑛太の瞳の奥に隠された闇に対する、『彼らが本気で編むときは、』で一皮剥けた生田斗真の受けの芝居が素晴らしい。6人の主要キャスト以外の助演陣の顔ぶれも豪華で、わずかな出演シーンにも関わらず、かなりのインパクトを残す。まさに『64-ロクヨン-前編』にも匹敵する社会派エンタメ&重厚感であり、今だからこそ“挑むべき一本”といえる。
瑛太の虚ろな目が、本当にコワい
俳優・瑛太の最大の魅力は「目」だと感じることが多い。同じ瀬々敬久監督の『64 −ロクヨン−』の熱血新聞記者では、まっすぐな中にちょっぴり卑劣さも宿らせたその目が、今作では、虚ろさが底なしの狂気を孕み、しかし時折、人間としての誠実な眼差しに戻ったりと、観る者の心をざわめかせ続ける。カラオケのシーンで、ぎこちない歌い方に徹する姿は、ドラマ「最高の離婚」のカラオケでの歌唱力がフラッシュバックし、感慨深い。
残念だったのは、並行して進行する別のドラマの扱われ方。本筋か、脇筋か。それとも同格で観るべきか。観客側をやや戸惑わせ、感動や衝撃が散漫になるリスクも抱える。