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人生はシネマティック! (2016):映画短評

人生はシネマティック! (2016)

2017年11月11日公開 117分

人生はシネマティック!
(C) BRITISH BROADCASTING CORPORATION / THEIR FINEST LIMITED 2016

ライター6人の平均評価: ★★★★★ ★★★★★ 4.2

中山 治美

『ダンケルク』鑑賞者は必見!

中山 治美 評価: ★★★★★ ★★★★★

『ダンケルク』後だと一層味わいを増す。
同作は”史上最大の撤退作戦”の困難さと恐怖を甦らせてはいるが、意義までは描いていない。
プロパガンダ映画の製作を巡る政府と映画人の攻防戦を描いた本作から、人々がどのように受け止めたのか当時の空気を感じ取ることができるだろう。
そう、映画は戦意高揚に利用された暗い歴史を持つ。
そんな状況下で文才とユーモアで、密かな抵抗を試みた女性脚本家のなんと魅力的なことか。
『幸せになるためのイタリア語講座』の監督らしい女性への応援歌でもあり、戦時中でも映画の灯を絶やさなかった先輩たちへのオマージュでもあり。
全編を貫く優しさと愛が、心をじんわり温めてくれる作品だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
なかざわひでゆき

映画の持つ力を高らかに謳いあげる秀作

なかざわひでゆき 評価: ★★★★★ ★★★★★

 第二次世界大戦下のロンドン。ドイツ軍の空襲によって明日をも知れぬ身の一般庶民に、夢と希望、勇気と感動を与えるべく映画作りに奔走する人々をユーモアたっぷりに描く。映画とは娯楽か芸術か。そんなよくある不毛な論議を一蹴するかのように、映画というメディアの持つ力を高らかに謳いあげる。
 と同時に、これは女性の社会的地位がまだ低かった時代に、脚本家として自立していく女性の成長物語でもあるのだが、その意志の目覚めをフェミニズムではなくヒューマニズムへと昇華している点もいい。映画を通して社会に貢献する。そこに人としての誇りと生き甲斐を見出すヒロインを、ジェマ・アータートンが清々しく演じて素敵だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
山縣みどり

より良い作品を作りたい映画人の心意気が伝わる

山縣みどり 評価: ★★★★★ ★★★★★

第二次大戦中、言葉の才能を買われて脚本家チーム入りしたカトリンの姿にフェミニズムを感じた。ロンドン空襲や映画製作を通して人間として、キャリア女性として成長する過程に説得力アリ。プロパガンダ映画というと国威掲揚エイエイオーな感じだけど、カトリンはじめとする映画人の戦争で疲弊した国民を勇気づけようと一丸となった感じが好感度高し! 彼らが情報省からの横やりに四苦八苦しながら、創意工夫で頑張る姿に映画ファンならニヤリとする場面が満載。アナログな特撮やスロップ(女性の台詞)なんて専門用語も気分を盛り上げる。そして、老いてもイケメン気分が抜けない俳優役のビル・ナイもいつも以上にチャーミングだ。

この短評にはネタバレを含んでいます
猿渡 由紀

働く女性の奮闘と恋を描く、泣けても明るい気持ちにさせる作品

猿渡 由紀 評価: ★★★★★ ★★★★★

日本では「ダンケルク」が先に公開されたためにそこが強調されているようだが、そのつながりは最も重要ではない部分。40年代を舞台にしたこの映画の主人公が、 当時作られたダンケルクの戦いについての映画の脚本家だというだけ。それ以前に、今作は、働く女性の奮闘もの。さらに恋愛ものでもあり、映画業界の舞台裏ものでもあり、かつ、戦地から離れていつつも戦争の恐怖に日々さらされている現実を描くものでもある。それらのバランスを絶妙に取っているのが、なんともすごいところ。悲しさもたっぷりあるが、ポジティブな視点を決して失わない。元気をくれる、素敵な映画だ。

この短評にはネタバレを含んでいます
斉藤 博昭

いやぁ、映画って本当にいいもんですね

斉藤 博昭 評価: ★★★★★ ★★★★★

ダンケルクの戦いを題材に戦意昂揚映画を撮る、“裏ノーラン作品”的な設定は、前半、思いのほか淡々と進み、セリフがささやくように小さいシーンもあったり、ドラマチックな感覚には程遠い。
しかしこの落ち着いたトーンが、近年の映画の「豪華テンコ盛り感」へのアンチテーゼのようで、徐々に心地よくなるから不思議。余白に美意識を感じる、日本の「わび・さび」に通じる境地を味わった。悲劇も、あえてさり気なく、静かに演出されることで胸の奥にしみわたる。要所のユーモアも的確。
そして亡き人の思いと主人公の信念が「映画の力」で結びつくラストは、あの『アルゴ』にも似た感覚。今は亡き映画解説者の名セリフが聞こえてきそう。

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平沢 薫

プロパガンダ映画の舞台裏を描きつつ映画論にもなっている

平沢 薫 評価: ★★★★★ ★★★★★

 映画は虚構だ、それゆえに魅力的だ---この立ち位置から物語が始まるのがいい。本作は、第二次世界大戦下の英国で撮影される戦争プロパガンダ映画の舞台裏を写実的なタッチで描きつつ、観客に今見ているものもまた映画であることを、何度も意識させる。例えば、新人脚本家であるヒロインに、先輩脚本家がなぜ人々は映画を見るのかという持論を語る。そして映画の外では、まるで映画のような、と形容したくなる出来事が何度も起きる。この多重構造が面白い。
 ベテラン英国俳優陣の共演も見もの。ビル・ナイと「おみおくりの作法」のエディ・マーサンがナイスなコンビぶり。ポール・リッター、リチャード・E・グラントも渋い。

この短評にはネタバレを含んでいます
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