海を駆ける (2018):映画短評
海を駆ける (2018)火のような前作の鋭さから、水のごとく緩やかな流れに
ディーン・フジオカ扮する謎の男は、深田晃司印の「闖入者」ではあるのだが、『歓待』の古舘寛治や『淵に立つ』の浅野忠信とは異なり優しい存在。暴力ではなく、融和(監督自身の言葉でもある)を場にもたらす者だ。それは監督がインドネシアのバンダ・アチェという土地にインスパイアされた世界観ゆえの反転なのだろう。
日本からアチェへ、3.11の記憶、漱石の「月が綺麗ですね」のロスト・イン・トランスレーション等を軸に共振と変容の回路が敷かれ、その意味で本質的に「バカンス」の映画だと思う。アジア的霊性はタイのアビチャッポンと響き合うものを感じた。太賀は続く『50回目のファーストキス』と併せて観るとさらに驚嘆!
この短評にはネタバレを含んでいます