響-HIBIKI- (2018):映画短評
響-HIBIKI- (2018)ライター3人の平均評価: 3.7
原作ファンも納得のハマり役!
2017年のマンガ大賞を受賞した原作漫画の要所をおさえ、その面白さを損なわずかなり忠実に映画化することに成功。特に天才少女作家の主人公を演じた平手友梨奈のハマリぶりは唯一無二ともいえ、彼女でなければヒロインの設定に説得力を与えるのは難しかったのではないだろうか。女優としての才能などはまだ未知数だが、欅坂46をしらずとも、平手のスターとしての非凡さが感じられた。また、似たようなキャスティングの作品が多い中、平手以外の若手キャストにもフレッシュな顔ぶれを起用しているのが新鮮でいい。まだ連載中のため天才の誕生を描くプロローグ編的な物語でしかないが、余韻の残る結末には続編を期待せずにはいられない。
脚本と演出の力量を軽く凌駕した、平手友梨奈の叛逆と痛快な蹴り
原作漫画における女子高校生の天才性と予測不能な行動が生むテンションを、平手友梨奈を口説き落として実写化した企画プロデュースは見事だ。山口百恵のメランコリーと満島ひかりのリベリオンを併せ持ち、嘘を嫌う稀有な才能が、映画という嘘の世界を本気で生きている。無邪気な笑顔を見せるアンビバレンツな瞬間もあるが、それは10代少女らしさを強調するに留まった。アイドル映画の手つきで彼女を演出するのは無理がある。この国に蔓延る男性原理や権威主義を破壊せんとするフィロソフィが、この監督には希薄だ。あの飛び蹴りをOKカットにしてはいけない。平手友梨奈の次回作がもしあるならば、園子温か是枝裕和の手に委ねるべきだろう。
となりの怪物ちゃん
今年公開の『となりの怪物くん』と『センセイ君主』の仕上がりを観ても、落差ありすぎる月川翔監督作だが、『となりの~』同様、冒頭からありえないアクションが用意。とはいえ、その後の展開も含め、飛び道具ともいえる平手友梨奈の存在感に救われた感アリ。恐れをしらない傍若無人な響のキャラは、彼女しかいないと言えるほどハマっており、いかにもコミック原作な、世間知らずの部分も違和感なく演じている。北村有起哉を除く男性キャストをも喰うほど、彼女を観る映画としては成功しているが、その存在感に甘えてしまったか、原作エピソードを並べただけの印象も強く、作品からカタルシスを感じられないのは事実だ。