軍中楽園 (2014):映画短評
軍中楽園 (2014)ライター2人の平均評価: 3.5
歴史に翻弄された男女の営みを闇に埋もれさせまいとする抒情詩
中国との戦いの渦中、台湾統治下の島にあった慰安所。慰安婦達と兵士達の刹那にして甘美な関係の悲喜こもごも。陽射しは柔らかくキャメラは流麗で砲撃の光さえも花火のよう。全ては純情な青年兵の追想ゆえ。謎めく過去を抱えたアンニュイな女性の魅力が映画を牽引し、大人への通過儀礼が描かれる。台湾でも議論を呼んだ2014年製作の本作がようやく公開されるのは、朝日新聞が慰安婦問題の誤報を認めて謝罪し、騒然とした年から時間をおく必要があったからか。女性描写が一面的だと批判することは容易だが、歴史に翻弄された人々の営みを闇に埋もれさせまいとするこの抒情詩は、不条理な現実を見つめ直す上でひとつの視点を与えてくれる。
不条理な運命が切なすぎて胸が痛くなった
軍が管理する公娼制度のなかでさまざまな事情を抱えながらも幸せを求める男女の物語は、実に切ない。大陸人の望郷や娼婦となった女性の絶望や達観、徴兵制の嫌悪といった登場人物の心理描写が巧みで、物語にぐいぐい引き込まれていく。中台対立という不条理に翻弄された人々の苦悩を次々にすくい取り、刹那的な美しさのある物語に仕上げたニウ・チェンザー監督の手腕に惚れ惚れだ。『モンガに散る』でも素晴らしかったイーサン・ルアン演じる青年兵の成長物語でもあり、熱演を披露する。しかし、同性として目が離せなかったのは、複雑な事情を抱えた娼婦を演じたレジーナ・ワンだ。月下美人をめぐる場面での彼女の表情が目に焼き付いている。