ダリダ あまい囁き (2017):映画短評
ダリダ あまい囁き (2017)ライター2人の平均評価: 3.5
ダリダ本人が降臨したようなステージ再現シーンは鳥肌もの
フランスではピアフにも匹敵する国民的な人気を誇る、偉大なシャンソン歌手ダリダの生涯を描いた作品。熱狂的なダリダ・ファンを自負する筆者としては大いに期待していたのだが、しかし数々の破滅的な恋愛遍歴やキャリアの浮き沈みに彩られた波乱万丈の人生は2時間強に収まりきるものではなく、残念ながら全体的に表層をなぞっただけの物足りなさは否めない。
ただ、ダリダ役のスヴェヴァ・アルヴィティは本人にかなり酷似しており、ステージ・パフォーマンスの再現シーンはまさに鳥肌ものの完成度の高さ。代表曲の大半がしっかりと網羅されているのも嬉しい。あと、サンレモ音楽祭の仕組みなど、欧州音楽界の基礎知識は見る上で必要かも。
「ダリダ」と「ヨランダ」の狭間で
満を持しての映画化、というべき安定の完成度。1967年パリでの自殺未遂を起点に、仏の国民的歌姫ダリダ(1933年生で美空ひばりより4歳年上)の54年間の数奇な生涯を多面的に探っていくミステリー風の語り口が吸引力アリ。主題は社会的ペルソナ「ダリダ」と、等身大の女性としての「ヨランダ」(本名)のギャップ&葛藤。普通の幸福をこそ求め、それに逃げられた、というスーパースターの素顔は我々にもわかりやすい理解だろう。
音楽映画としては演者の物真似パフォーマンスではなく、オリジナル音源を使ったのが大正解。伝記ドラマの真実性と、本物の歌声の説得力がうまく融合している。70年代後半の米国進出ディスコ時代も◎!