イカリエ-XB1 (1963):映画短評
イカリエ-XB1 (1963)ライター2人の平均評価: 3.5
あなたも劇場で、ダークスターに襲われる!
狂ったアニメのイメージも強いチェコ映画といえども、インスピレーションを受けたのは『惑星ソラリス』で知られるスタニスワフ・レムの「マゼラン星雲」。それだけに、冷戦時代を感じさせる内容は至って真面目で、演出もシンプル。幾何学的な宇宙船内のセットに、『ひなぎく』のデザイナーによる衣装、カレル・ゼマン作品の音楽家が奏でる電子音楽と、レトロでキッチュな雰囲気が楽しく思えるのも前半だけで、次第に謎のダークスターに襲われる劇中の乗組員同様、睡魔と戦うこととなるだろう。とはいえ、『2001年宇宙の旅』を始め、「宇宙大作戦」「宇宙家族ロビンソン」など、後のSF作品に大きな影響を及ぼした一作であることは事実だ。
美術・衣装・構図のデザイン性に驚嘆する60年代チェコSF
幻のSF映画が美しく甦った。4Kレストアによるモノクロのチェコ作品。生命探査に向かう船内の密室で進行する日常的なドラマ、遭遇する宇宙船のミステリー、襲い来る謎の疲労感、意外性ある結末…。特撮技術は60年代初頭のものだが、SF映画を刷新した『2001年宇宙の旅』より5年前に、この美術・衣装・構図における先進的なデザイン性の数々には驚嘆せざるを得ない。一点透視図法、スポーツジム、テレビ電話、ラストカット…。キューブリック感化説も都市伝説として処理できず、夢想は拡がる。原案はスタニスワフ・レム。カレル・ゼマン作品やヤン・シュヴァンクマイエル作品のズデニェク・リシュカによる電子音楽が耳に残る。