シュガー・ラッシュ:オンライン (2018):映画短評
シュガー・ラッシュ:オンライン (2018)ライター4人の平均評価: 4
ワイルドなデジタル姫の自分探しとアクション&ミュージカル
盛り沢山で絶妙に甘辛ミックス。まさしく優秀な娯楽映画! 2012年の前作に続き基本軸はアイデンティティ劇。ヴァネロペはオンライン上のデス・レースなゲームの世界に新しい居場所を見つけ、古いホームに居たいラルフとの絆に軋轢が生じる。今回はすべてのトラブルの元凶となる彼の「愚者の悲哀」が極まり、二人の関係は『道』のジェルソミーナとザンパノの諸要素を組み替えた印象もある。
ネット空間の可視化も後発の洗練があり、特にディズニーサイトの自社ブランドならではのテーマパーク感は痺れた! プリンセスの部屋では縦の歴史が横に並列されて姫たちが大集合し、ヴァネロペもそこに系譜付けされる。これぞ端的に「ネット的」。
メタフィクション的おもしろさもたっぷり
シリーズの根底にあるのは"もしもゲームのキャラクターが、ゲーム上では役柄を演じているだけで、別の独自の人格を持っているとしたら"というメタフィクション的なおもしろさ。それをディズニーが描くので、有名なディズニー・キャラや「スター・ウォーズ」のキャラが続々登場。ディズニー・プリンセスたちが、映画とは違う現代的な普段着でくつろぐ姿が見られるだけで楽しい。ピクサー製作の「メリダとおそろしの森」のメリダのことを、「アナ雪」のアナが「あの子は別のスタジオの出身だから」と言ったりするような舞台裏ネタもあちこちに。映画史に残る古典的キャラクター、キング・コングへのオマージュもたっぷり盛り込まれている。
ディズニーの横暴さを目の当たりにする!!
ネット世界だけに、ソニーの『絵文字の国のジーン』に先を越された感があるが、さすがはディズニー。プリンセスから『スター・ウォーズ』、マーベルまで、自社キャラを大挙登場させる横暴っぷり。よって、オフィシャル・サイトのシーンは、『レディプレ』以上の熱量とテンションを体感できる。しかも、『ワイスピ』に影響を与えた「グラセフ」風ゲームではガル・ガドットが声をアテるなど、小ネタの数は前作の比じゃない! ネットの誹謗中傷の件もサラリ描くあたりもなかなかだが、ストーリーに関しては、ラルフとヴァネロペの関係性をどう完結させるかに焦点を当てすぎたあまり、前作のインパクトには欠けている。
想像力と創造力がすばらしい
インターネットを、ここまでカラフルでユーモラス、かつ「なるほど」と思える形で表現した想像力と創造力に、まずは大拍手。テクノロジーという無機質な言葉で語られる世界が、ここでは、たっぷりのハートと息吹をもっているのだ。その世界ではいろんなことが起こり、笑いもいっぱい。そのため、中盤でやや話があちこちに行くような気がしないでもないが、伝えられるメッセージは明確。真の友情に、距離は関係ない。クリスマスの時期になると欧米では毎年特定の映画が放映されるように、今作は日本でも、卒業や転勤の時に、いつも必ず思い出される古典的映画になりえると思う。