バンクシーを盗んだ男 (2017):映画短評
バンクシーを盗んだ男 (2017)アートの「文脈」を共有しない声なき者のファックな本音
イギー・ポップ(ナレーション)司会の朝まで生テレビ的沸騰! これだけ面白い議論が白熱するアート系ドキュも珍しい。先行二作がバンクシーの掌の上にあるのに対し、こちらは分離壁のグラフィティが炎上という「いかにもバンクシー」な騒動から想定外の域に転がっていく。そのエンジンはパレスチナ庶民の素朴な生活意識やたくましい商魂だ。
本作の多面的な主題を要約するのは野暮だが、基本線に一般労働者=地元のタクシー運転手を置いた意図は明白だろう。本来「声なき者」のストリートアートだろ? なに制度化されちゃってんだよ。現代アートの「文脈」を持たない労働者のシンプルな怒りが、実は外部からの鋭い批評として突き刺さる。
この短評にはネタバレを含んでいます