祝福~オラとニコデムの家~ (2016):映画短評
祝福~オラとニコデムの家~ (2016)「彼女は、私だ」というアングルが広い共感の回路となる
「弟に優しくしないと。疲れるけど…」と、重荷をひとりで背負い込む14歳の長女。おそらく彼女に最も共感するのは、子育て中のお母さんだと思う。ワンオペ育児と、女の子としての自分の裂け目から生じる心の悲鳴。時にはヒステリックに怒りをぶつけ、自己嫌悪に陥って余計に疲れる。この負のスパイラルは日本でも他人事ではない、と受容されるはずだ。
フィクション/ドキュメンタリー問わず、家族を扱った現在の優れた映画は「世話」の周辺に問題意識が集中している。疲弊、具体的な人手不足、そして幸福の在り処。多くの人が「事件」の隣でぎりぎり頑張って踏み止まっている。ヨソに出て行った母親に向けるカメラの“絶妙さ”には唸った。
この短評にはネタバレを含んでいます