人間機械 (2016):映画短評
人間機械 (2016)厳かな映像美で表出される劣悪な労働環境の醜い現実
発展途上国などの劣悪で悲惨な労働環境を捉えたドキュメンタリーは少なくないが、しかし本作のように、その被写体からあえて一定の距離を保ちつつ、洗練された厳かな映像美によって観客を引き込んでいく作品は初めて見た。そのビジュアルはまるで、フリッツ・ラングの『メトロポリス』のようだ。
この種の作品の難点は見ていて辛くなってしまうことだが、しかしここでは醜い現実を美しく表現することで、見る者に抵抗感や嫌悪感を忘れさせる。それでいて、貧富の格差、搾取と抑圧、強制労働という問題の本質を見失うことは決してない。これこそが芸術の力であろう。
この短評にはネタバレを含んでいます