クレイジー・リッチ! (2018):映画短評
クレイジー・リッチ! (2018)ライター4人の平均評価: 3.5
王道ながらも現代的なラブコメを軽々とやってのける爽快さ
オールアジア系キャストが話題だが、物語として必然であり、観始めた瞬間、その特異性はすぐに消し去られる。英語のセリフがメインなのも、シンガポールが舞台なので必然。ストーリーもある程度、予想の範囲だが、その想定内であることの心地良さが今作の魅力ではないか。わかっているけど感動する。思わず涙する…。意外にハードルの高い難関を、今作は軽々と突破していく。
成功の理由はアジア系云々の問題を通り越し、男女の立場を超えたラブストーリーにあると思う。ヒロインの終盤の覚悟と、それに対する相手の決断など、男女を入れ替えても成立する。思いやる心が性別を軽やかに超える点に、誰もが感情移入してしまうツボが隠れている。
ハリウッドとアジアが生んだ奇跡のシンデレラ物語
プロデューサーを除く、ほぼすべてのスタッフ&キャストがアジア系というハリウッド映画が、米国で受け入れられる奇跡。それだけでも一見の価値があるが、エンタメ映画としての完成度も高い。
アジアの因習を超えて愛をつかもうとするヒロインの奮闘は女性の強さを伝えるに十分だし、彼女の不器用さが引き起こす笑いも妙味。グローバル社会のシンデレラ・ストーリーというか、アジア版『プリティ・ウーマン』か。
ヒロインもよいが、それを支える女優陣が、またイイ仕事を見せる。親友役のオークワフィナは『オーシャンズ8』以上に人間味にあふれた笑いを提供し、ミシェル・ヨー姐さんは堂々たる女帝ぶり。この競演には華がある。
愛と家柄を秤にかけると、どちらが重い?
恋人が実は大富豪の御曹司!? 女性ならうっとりの設定だが、玉の輿婚って本当にハードルが高いなと思わせられた。彼ママや恋人の元カノたちの妨害工作やディス、家柄自慢が恐ろしく、愛と家柄の間で悩む恋人たちに深く同情。ヒロインが体験するカルチャー・ギャップは欧米VSアジアを超えた<名門VS庶民>であり、個人の資質を認めない旧弊な考え方に辟易することも。微妙な顔立ちのC・ウーがヒロインにぴったりで、モデルのような美女軍団に負けない才気を発散。そして、要所要所をしっかりと締めてくれたM・ヨーは相変わらずエレガントで素敵。彼女自身の生い立ちに近い役だけに、本当にはまり役だった。
いろんな意味で、香港の旧正月映画!
ソノヤ・ミズノに、ケン・チョン、『オーシャンズ8』でインパクトを残したオークワフィナまで、そのオールスター感(?)は香港の旧正月映画に近いが、家族コメディベースに、流行りモノ(「バチェラー」など)やロマコメ要素をまぶした内容まで似ている! そのため、このノリについていけないと、シンガポール華僑に“バナナ”扱いされる中国系アメリカ人のヒロインばりに、ぼっちと化すだろう。「マネー」の北京語カバーに始まり、テレサ・テンの「甜蜜蜜」「つぐない(カバー)」が来たと思えば、サリー・イップが歌う「マテリアル・ガール」の広東語カバー(「200度」)まで流れるサントラも、かなりクレイジーだ。