ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪 (2015):映画短評
ペギー・グッゲンハイム アートに恋した大富豪 (2015)ライター2人の平均評価: 3.5
現代美術史、丸わかり
普通、ドキュメンタリーで一人を追うのは、その人物の核心に迫っていくものだ。
ところが本作は、人生を美術で犠牲にした人とかナルシストとかケチとか。恋多き女性で敵味方が多いのか、証言者によってバラバラなのが斬新。
だが、これだけは言える。
男性社会の美術界で道を切り拓いた革命児であり、戦時中にユダヤ系画家と作品を守ったヒロインであり、何より美術愛好家だったのだと。
デ・ニーロの両親をはじめ多くの画家たちのパトロンだったワケだが、財力があったとしても人を育てるのは生半可な気持ちではできないだろう。
同時に彼女を追うことで、現代美術史と鑑賞法も見えてくる。現代美術入門編としても最適な1本だ。
現代の基準でも型破りなソーシャライト
富を武器にパトロネスになり、現代アートの啓蒙に貢献したペギー・グッゲンハイムの人生は、型破りの一言だ。美人じゃないので芸術家のミューズになれなかったけれど、奔放な性生活を謳歌し、あまつさえそれを公表。SEXテープ暴露で有名になるセレブの先逹? 露悪趣味の反面、ポロックやロスコーといった新進気鋭の芸術家を見出す才能を持ち、展示にも素晴らしい才能を発揮、という令嬢のギャップが興味深い。実際、美術史家やキュレーターの証言から形作られるペギーの人となりはとても複雑だ。ベネツィアでペギーのコレクションを見たときに頭に浮かんだ「どんな女性だったの?」という疑問の答えをこのドキュメンタリーで見つけた。