バグダッド・スキャンダル (2018):映画短評
バグダッド・スキャンダル (2018)ライター2人の平均評価: 3.5
紛争を利用して金儲け? 国連への不信感が増すばかり。
国際平和の維持や人権保護を目的とする活動をする国際組織として盲目的に信頼していた国連だけど、ここ数年は不祥事が続々。本作が明らかにする石油食料交換プログラムに絡む汚職もそのひとつ。汚職に気づいた国連職員マイケルが危険と背中合わせの状況で調査に乗り出すハラハラ感は伝わるが、不正の仕組みがよくわからないのが難点か。もう一つの難点はB・キングスレーで、登場した瞬間に役どころがわかるので意外性ゼロ!? とはいえ、国連職員という尊敬すべき存在が裏で私腹を肥やしていた事実に愕然となるので、告発ものとしては必見。鑑賞後、世界各国の紛争が終わらないのも無理はないと脱力感に襲われてしまった。
国連史上最悪のスキャンダルを描いた実録政治映画
イラクの貧しい庶民を救うはずの国連人道支援プログラムが汚職の巣窟と化し、経済制裁を受けているはずのサダム・フセインはもとより、国連幹部や先進各国の政治家・大企業が暴利を貪っていた。そんな国連史上最悪のスキャンダル事件の赤裸々な内幕を、当時の担当職員が執筆した回顧録を元にして描く実録政治映画である。崇高な目的のためには妥協も必要、綺麗ごとで済まされないのが外交の現実などという詭弁が悪を野放しにして増長させ、正義を貫こうとする者が闇へと葬られる恐ろしさ。理想に燃える若き外交官の果てしない絶望と無力感は、当事者の記述が元になっているだけあって説得力がある。ジャクリーン・ビセットの健在ぶりも嬉しい。