ホットギミック ガールミーツボーイ (2019):映画短評
ホットギミック ガールミーツボーイ (2019)ライター2人の平均評価: 4.5
これが愛だ
ヒロインに堀未央奈を起用して、このファーストカットを撮った時点で“勝ち”。その後も、ドSなメガネ同級生、人気モデルの幼馴染、優しい義兄といった定番イケメンとの出口が見えない恋愛地獄を描きながら、幾何学的な臨海エリアの公団など、ラブコメイメージも強い原作を、いい意味でブチ壊してくれる。リミックスされ、ループする「カノン」「悲愴」や泉まくらのラップがヒロインの揺れる心情を後押しし、キラキラと正反対な不穏な空気感は、男たちの駆け引きをよりサスペンスに。そして、クライマックスは山戸作品おなじみの“言葉責め”からの、『愛がなんだ』に対する回答。終始、香り立つ色気も含め、ぐうの音も出ない!
時には支配され、とことん嫌な気分を味わっても、これこそ恋愛
ヒロインがどこにでもいそうな高校2年生で、兄を含めた3人との恋愛模様という物語自体は、少女コミック王道の胸キュン路線なのだが、息苦しいほどの閉塞感で押してくる。過剰ともいえる人物のアップや、男子キャラのいい意味での気味悪さも強調され、違和感こそが恋愛の真実だと言いたげな演出が続く。『溺れるナイフ』と同様に好き嫌いは分かれる可能性もあるが、山戸監督の揺るぎない志向に感服。「あの時の恋が、私だけの愛に変わる」と、傷つきながらも少しだけ大人に成長する主人公の姿は、切なさと凛々しさの同居した、映像だからこその佇まい。コミックを実写化する強烈な目的意識と、高校生恋愛映画の新たな潮流を全編で感じた。