世界でいちばん悲しいオーディション (2018):映画短評
世界でいちばん悲しいオーディション (2018)ライター2人の平均評価: 3.5
少女たちはなぜそこまでしてアイドルを目指すのか?
BiSHやBISなどの人気アイドルグループを抱える音楽事務所WACKによる、2018年合同オーディションの模様を記録したドキュメンタリー。24人の少女たちが九州の離島に集められ、7日間にわたる過酷なアイドル版「ブートキャンプ」が展開するわけだが、しかし「それってアイドルとどう関係あるんだ!?」と思わず首を傾げる理不尽な課題も少なくない。だからこそ、なぜそこまでしてアイドルを目指すのか?という少女たちの考えや覚悟も次第に見えてくる。まあ、それ以前にそれだけの忍耐力や従順さなどが求められる世界なのだろうけど。その是非を含め、21世紀日本におけるアイドル像を考察する一つの材料にはなるかもしれない。
王道ドキュメンタリーと見せかけて。
カメラに収められるのは、オーディション合宿を通し、生まれて初めて“理不尽”と対峙した24人の少女。これまで、さまざまな波紋を起こしたWACKのアイドル・ドキュメンタリーにしては、あまりにド直球なタイトルなうえ、作風もこれまで避けてきたと思われる『DOCUMENTARY of AKB48』(当然、高橋栄樹監督作)に近い。特筆すべきは、脱落しするや否や、突然やる気を失い、ネガティブ発言をし、用意された敗者復活戦も辞退する姿。若さゆえか、その変わり身の早さが、とにかく怖い。そんな周囲にも感染する異常な空気感で、ハイテンションが引き起こすデスソース祭から地獄絵図に突入。観客も“共犯者”となる瞬間だ。