ザ・フォーリナー/復讐者 (2017):映画短評
ザ・フォーリナー/復讐者 (2017)ライター4人の平均評価: 4.3
デス・ウィッシュ、ジャッキー!
ふらっと観たら、えらい面白かった!という娯楽映画のある種理想の愉悦。『狼よさらば』系譜のヴィジランテ(私刑)物と政治スリラーを接続させた渋いハードアクションで、『96時間』より重い。IRAをUDIと架空の名称にしたのは、テロ時代の全体性にピントを合わせる配慮とも思える。
適材適所に徹したジャッキーは最高。憔悴しきった60代の男の哀愁を等身大で体現しつつ、下地にマーシャルアーツのある元米軍特殊部隊(原作『チャイナマン』では元ヴェトコンのゲリラ兵)の設定を十全に活かす。P・ブロスナンもボンド俳優の色気を封印し、M・キャンベル監督もプロの仕事。空港のロビーでのラップトップ危機一髪など素晴らしいよ!
ここ20年のジャッキー映画で最高峰の仕上がり!
カテゴリー的には、よくある“じつは、めっちゃ強い奴だった映画”だが、基本ハズレなしのマーティン・キャンベル監督作。冒頭の爆破シーンから緊迫感ある演出が続き、ピアース・ブロスナン演じる曲者キャラやIRA絡みの先が読めない展開もあり、文句なしに面白い。そこに、いつもの笑顔は封印しつつも、おなじみのアクションをしっかり魅せるジャッキー・チェンが投入! その重厚なサスペンスとの調合バランスが見事であり、いぶし銀と化したシリアス・ジャッキーの魅力が随所に炸裂する。自身が歌う主題歌で締めてくれることもあり、ここ20年のジャッキー映画の中でも最高峰の仕上がりといえるだろう。
渋めのシリアス路線で新境地を開いたジャッキー
ジャッキー・チェンが珍しく渋めのシリアス路線に挑んだポリティカル・スリラー。今回演じるのは、ロンドンで中華料理店を営む中国系ベトナム人クァン。かつてベトナム戦争で米軍特殊部隊の工作員だった彼は、唯一の肉親である娘をIRA過激派による爆弾テロで失ったことから復讐の鬼となる。’90年代の小説を映画化しているため、政治的な背景は決してタイムリーと言えないものの、戦争と贖罪をテーマにした重厚なドラマは見応えあり。なによりも、60代とは思えぬジャッキーのウルトラハードな格闘アクションと、主人公の狂気にも似た執念のほとばしる熱演には目を見張る。近ごろ期待外れが多いというジャッキー・ファンにもおススメ。
ハードボイルド・ヒーロー、ジャッキー熱烈歓迎!
笑顔を封印した現代劇のジャッキーを見るのは『新宿インシデント』以来。同作と異なるのはアクションもしっかり決めて見せることで、珍しいハードボイルドヒーロー像を楽しめる。
全編緊迫感に満ちているが、英国~アイルランドを舞台に据えた点が妙味。なにしろテロリズムがくすぶり続ける国境。EU離脱後に予想される両国間の緊張を織り込んだかのようなピリピリした雰囲気の中、一見、頼りなさげだが実はムチャクチャ強い東洋人の暗躍が目を引きつける。
アジアを舞台にした大味な作品が続いていたジャッキーだけに冷徹な彼は新鮮で、しかもクール。ユーモアは控えめだが、イライラしっぱなしのP・ブロスナンが、むしろ笑える。