轢き逃げ -最高の最悪な日- (2019):映画短評
轢き逃げ -最高の最悪な日- (2019)人間という存在の危うさを描くサイコロジカルなサスペンス
俳優・水谷豊の監督第2弾は、轢き逃げ事件の顛末を加害者と被害者、それぞれの視点から描くことで、悪意や憎悪、嫉妬、復讐心など人間の心の暗い闇をじっくりとあぶり出していく。いわゆる犯罪捜査の謎解きや社会派的な啓蒙・警鐘が焦点ではなく、善悪では割り切れない人間という存在の危うさをサイコロジカルなサスペンスとして描いている点が面白い。前半と後半で主人公が入れ替わる脚本の構成も巧みだし、陰影を強調したノワーリッシュなビジュアルも魅力的。いろいろな要素を詰め込み過ぎた感は否めないものの、一貫したテーマにはブレがない。水谷監督の今後が楽しみになる佳作だ。
この短評にはネタバレを含んでいます