サンセット (2019):映画短評
サンセット (2019)100年前の欧州の腐敗と混沌に21世紀の今を映し出す
あの大傑作『サウルの息子』のネメシュ・ラースロー監督がまたしてもやってくれた。第一次世界大戦の足音が聞こえ始めた1913年。栄華を極めるオーストリア=ハンガリー帝国の古都ブダペストを訪れた一人の女性が、失踪した兄の行方を探し求めるうち、激動する時代の大きなうねりに呑み込まれていく。『サウルの息子』と同様、カメラは主人公イリスに焦点を定めて付きまとい、彼女の視界や意識に入ってくるものしかハッキリと映さない。しかし手法は同じでも主題は違う。イリスを取り巻く謎と秘密。その迷宮を彷徨いながら、破滅へと向かう100年前の欧州の腐敗と混沌に21世紀の今を映し出していく。妖しくも不穏な魅力を湛えた佳作だ。
この短評にはネタバレを含んでいます