セメントの記憶 (2018):映画短評
セメントの記憶 (2018)露わになる戦争の不条理
”風が吹けば桶屋が儲かる”じゃないが、”戦争が起これば建築業者が儲かる”。
内戦後、再開発ラッシュで湧くベイルートの労働力となっているのは、今まさに内戦真っ只中のシリア人移民労働者だという。
本作はセメントを媒体に、戦争の不条理を静かな怒りを持って白日の下に晒した秀作だ。
建築現場から見える海は美しく、歩み始めた街からは活気すら感じる。
しかし彼らは、時に工事音に戦時中の記憶を呼び覚まされ、夜はスマホで破壊されまくっている母国の状況を見守る。その心情は幾ばくか。
ドキュメンタリー映画『アレッポ 最後の男たち』と合わせて鑑賞すると、本作がより重層的に胸に響いてくるに違いない。
この短評にはネタバレを含んでいます