五億円のじんせい (2019):映画短評
五億円のじんせい (2019)ライター2人の平均評価: 3
転がるべきエピソードが転がらず
“他人の善意によって救われた自分の命が息苦しくなった主人公の旅”という企画・設定は、確かに面白い。しかも、ホームレスとの出会いといった、ありがちな展開だけでなく、添い寝ハウスやオレオレ詐欺、死体清掃など、しっかり社会の闇の部分まで描いている点は高く評価したい。とはいえ、それらの17歳の青年にとっての未知なる体験エピソードが、演出力の弱さからか、巧く転がらない。恐ろしいぐらいテンポが悪いのだ。そのため、肝であるブラックユーモアとしての部分が弱くなってしまった感アリ。『ソロモンの偽証』で瞳が印象的な事件のキーパーソンを演じた望月歩の芝居が申し分ないだけに残念だ。
善意を善意として受け取るのは難しいの?
プレミスを聞くと非常に重い物語に思えるが、ポスター・ビジュアル通りにポップで前向きな展開。主人公がSNSで自殺宣言したり、彼に絡むJKが「この世界は生きる価値がない」と考えたりするあたりは、最近の若者らしさなのか? SNS上のメッセージで一念発起した主人公が旅に出て、多くの善意を知り、多くの悪意も知る展開は青春ドラマとして好感が持てる。演じる望月歩は表情演技が上手で、そのときどきの心理をちゃんと表現する。劇中で言われる優しくしたくなる人”といった趣だ。海外での手術&渡航費用を募金で集める人に寄付する側は見返りなど求めてないわけで、善意を受け取る側も心構えが必要と思いました。