工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 (2018):映画短評
工作 黒金星(ブラック・ヴィーナス)と呼ばれた男 (2018)ライター2人の平均評価: 5
韓国映画で学ぶ政治の裏のウラ
韓国VS.北朝鮮のスパイ戦を描いた映画はこれまでにもあったが、”北風工作”とはまた新鮮。選挙前、現政権を維持する為にスパイを使って北朝鮮から武力挑発してもらうよう働きかけるのだが、その時に放たれる台詞にシビれる。”国が揺れれば、与党に票が集まる”。大衆心理と政治の本質を一言で表現した脚本の秀逸さ。実話をヒントにしているとはいえオリジナル脚本で、監督自身が共同脚本も兼ねている。ここに韓国映画界の底力を感じるのだ。
翻ってその台詞は、今の日本の政治にも通じる。情報&印象操作に振り回されず、今の社会を見つめる為にこれほど参考になる映画があるだろうか。今見るべき1本である。
韓国と北朝鮮の微妙な距離感に心底、驚愕
分裂以来、敵対する韓国と北朝鮮だから、スパイ戦を行なっているのは当然。とはいえ、その実態がつまびらかにされることはなく、妄想を膨らませるだけだった。この映画までは! ファン・ジョンミンが熱演する黒金星は、入念な準備と時間をかけて敵の懐に入り込み、ときには自白剤を使った尋問にも耐える。命がけで任務を遂行する姿はひやりの連続で、『007』はファンタジーと実感。現場スパイの祖国愛を裏切る形で利益追及する政治家が苦々しい。政権が変わると映画製作にも影響がある韓国で、今だから作れた映画なのだと聞いたが、国民の受け取り方を知りたい。政治の闇に埋もれた事実を暴き、痛快エンタメ作に仕上げた監督の手腕も見事だ。