ゴーストランドの惨劇 (2018):映画短評
ゴーストランドの惨劇 (2018)ライター4人の平均評価: 3.5
残虐性よりも構図で勝負する異才の円熟
『マーターズ』『トールマン』とロジェ監督の作品を追いかけているファンは、ドラマが劇的に転調することは想像がつくだろう。今回の“それ”も絶妙という他にない。
絵として見せるべきものをしっかりと描写。『激突!』のように現われるキャンディ屋のトラック、突き立てられた中指、異様なおしゃべり人形、鏡に書かれた“HELP ME”のメッセージ……いずれも恐怖を喚起する絵だが、伏線としてもきっちり活かされた。
『マーターズ』に比べると残虐描写が控えめであるのは当たり前だが、裏を返せば、それに頼らずとも十分に怖いと思わせることができる。いたぶられる女優陣の熱演をも計算に入れた、ロジェ監督の円熟!
ロジェ監督のホラー愛が凝縮
ネタバレ厳禁のトリックがあるものの、決してそれだけではなく、パスカル・ロジェ監督のホラー愛が凝縮された一本といえるだろう。ラヴクラフト崇拝で始まるだけに、「閉ざされた部屋」かと思いきや、「ロブ・ゾンビの映画みたい」というセリフが飛び出し、『悪魔のいけにえ』オマージュへ。その後も、ロジェお得意の容赦ない暴力描写の一方で、ベタさ全開の音響効果や、人形部屋や地下室などを縦横無尽に動くカメラワーク、91分という上映時間に至るまで、まるで“ホラー映画の見本市”のよう。そんな既視感からモノ足りなさもあるもしれないが、リピートすることで、かなり緻密に作られているのが分かる。
幽霊屋敷ホラーと思わせておいて実は…!?
フレンチ・ホラーの鬼才パスカル・ロジェの最新作は、出世作『マーターズ』を彷彿とさせる要素を散りばめたサイコロジカル・ホラー。16年前に惨劇の起きた実家へと久しぶりに戻ったホラー小説家ベスは、いまだ当時のトラウマに苛まれた姉ヴェラを救おうとするうち、自身も不可解な現象に見舞われていく。『死霊館』的な幽霊屋敷ものと思いきや、実際は『悪魔のいけにえ』の系譜にひねりを加えた作品。ネタバレ要注意ゆえ、これ以上のことは語れないが、しかし勘の鋭い映画マニアならば、意外と早い段階で真相に気付いてしまうかもしれない。それでもなお、得体の知れない異様な恐怖に戦慄する。姉妹の母親役は歌手ミレーヌ・ファルメール!
ヒロインはラヴクラフト好きで小説を書く美少女だし
美少女姉妹の金髪の姉は屋敷を見て「ロブ・ゾンビの家みたい」とか言い、黒髪の妹はラヴクラフト好きで自分も小説を書いていて、そんな小ネタだけでもくすぐられてしまうが、妹が小説を書くという設定はストーリーにも絡んでくる。美少女ホラーの定番アイテム大会でもあり、姉妹は少女時代と成長後の両方が登場して2度オイシく、人里離れた一軒家、アンティックの人形たちで溢れる部屋、奇怪な形の人形、化粧を施された少女等々を連打して、さらにアイスキャンディー売りの自動車、謎の大男をプラス。「マーターズ」のパスカル・ロジェ監督らしい、うわ~そこまでやりますかな残虐嗜好もありつつ、ストーリーの仕掛けでも楽しませてくれる。