ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト (1968):映画短評
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ザ・ウェスト (1968)ライター2人の平均評価: 4
タランティーノがお手本とする巨匠レオーネの最高傑作
個人的には慣れ親しんだ旧邦題でのリバイバルが望ましいとは思うものの、とはいえリアルタイムでは日本未公開だったインターナショナル・バージョン、しかも昨年イタリアで完成したデジタル修復版での上映は嬉しい。言わずと知れた巨匠セルジオ・レオーネの最高傑作。もはや、マカロニ・ウエスタンというジャンルの枠を完全に超えた一大叙事詩である。この雄大なリズム、重厚なドラマ、流麗なアクション、感情を揺さぶるモリコーネの音楽。160分を超える映像のひとつひとつにレオーネの美学と哲学が詰め込まれている。今また改めて見ると、タランティーノがいかに本作を映画作りのお手本としているのかがよく分かる。
「長い」と感じるか。「豊穣な時間」と感じるか
長さはタランティーノの「ワンス・アポン」とほぼ同じ。物語の進行に必要なのかわからないシーンが多々あるのも、これまた同じ。観る側に体力を要求する作品ではあるが、一見、無駄と思えるシーンがゆっくりと「豊穣な時間」に変化していく。
冒頭のシークエンスからして、いきなり「長い」が、汽車が来るのを待つ男の顔のアップだけでも味わい深く、要所に「映画的瞬間」を発見できるだろう。西部劇でありながら、気がつけばヒロインを中心に物語が動いている作りは、いま観ても新鮮だ。そして音楽の効果が絶大で、エンニオ・モリコーネらしいロマンたっぷりのメロディが荒れ果ててゆく世界に荘厳さと叙情を加える。これもじつに「映画的」。