クロール -凶暴領域- (2019):映画短評
クロール -凶暴領域- (2019)ライター5人の平均評価: 3.6
アスリート魂が肝となる熱血パニック映画
アジャ監督の作品にしては直球で、タイトなつくり。娘と父のサバイバルに焦点を絞り、『ピラニア3D』のように笑いに走ることなく、シリアスに突っ切る。
親とのつながりを背景に置いてヒロインの極限状態を描いた点は『ロスト・バケーション』を連想させるが、こちらはさらにヒロインの闘争心を強調。対ワニという命がけの競技に挑んだかのような、ある種のアスリート性が宿り、映画の熱と化す。
『メイズ・ランナー』シリーズでもアスリート性を発揮していたK・スコデラリオの熱演が光り、その凛とした姿に改めて惚れ直す。こういう強い女性をきちんと撮れることもアジャ監督の強み。
ワニから生き延びる。それだけを描く豪速球が快感
映画1本まるごと使って、ただ"巨大なワニから生き延びる"ということだけを描く直球ぶり、その潔さ。一応、父と娘の話という骨子はあり、必要最小限のキャラクター描写はあるが、それらは時間的にも短くチャチャッと済ませて、あとはハリケーンのせいで住居に侵入してきたワニとのバトルだけ。登場人物も、ほぼヒロインと父親と飼い犬だけ。それでいて、飽きさせない。一瞬、これで助かったのかと思うと、そうは行かないという、ひっくり返しが何度もありつつ、ワニとヒロインの攻防戦をギュッと凝縮した87分。ヒロインの強い眼差しの真っ直ぐさと、映画の余計なものを削ぎ落としたストイックさが同期して気持ちいい。
まさかの実家がワニワニパニック!
アレクサンドル・アジャ監督が撮った動物パニックであるにも関わらず、『ピラニア3D』のおバカ&パリピ色は皆無! ストレートかつシンプル。アジャ監督お得意の容赦ない残酷描写を散りばめ、“ワニ版『ドント・ブリーズ』”ともいえるスリリングな密室劇を、どシリアスに演出している。台風の中、帰省したヒロインが体験する恐怖は、どこか『ロスト・バケーション』感も見られるが、水泳選手とコーチの関係である父娘+わんこのスポ根ドラマとして観ると、なかなか胸迫るものも。また、オヤジギャグがタイトルであるビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツのノー天気なナンバーをエンドロールに流すなど、至るところにセンスを感じる88分。
アレクサンドル・アジャ久々の動物パニック・ホラー
亜熱帯気候のフロリダを舞台に、大型ハリケーンの襲来で身動きの取れなくなった父親と娘が、近隣のワニ動物園から脱走した巨大アリゲーターに襲われる。アレクサンドル・アジャ監督が久々に手掛けた本格的なホラー・パニックだ。かつて『ジョーズ』の亜流として量産されたアリゲーター物。以前に『ピラニア』をパロディ的ノリでリメイクしたアジャ監督だが、今度は打って変わって超シリアスな路線で獰猛なワニの恐怖と決死のサバイバルを描く。これが文字通り手に汗握るような面白さ!見ているだけで痛そうなバイオレンス描写を含め、スリルとサスペンスのつるべ打ちで目が離せない。アジャ監督の健在ぶりを示す快作だ。
災害時、避難勧告には従いましょうね
ハリケーンで浸水した住宅地にワニがうじゃうじゃ、というアイデアで最後まで突っ走るB級映画だが、アジャ監督ファンでなくとも楽しめる要素満載。敵(?)は自然災害とモンスター級に怖いワニなので、主役の父娘と愛犬の壮絶なサバイバルっぷりはもう手に汗握るほど。ユーモアがあった『ピラニア3D』と違って、シリアス度が高いのだ。父娘に重きを置く一方で脇キャラの扱いはかなり雑だが、それもある意味、痛快だ。そして、最新技術を駆使したワニの造形は一見の価値あり。製作陣はワニの動きなども相当に研究していて、「このワニ、本物?」と思わせるリアルさで見る側の恐怖を増長! 見終わって、避難勧告には従うべしと思いました。