ゴッホとヘレーネの森 クレラー・ミュラー美術館の至宝 (2018):映画短評
ゴッホとヘレーネの森 クレラー・ミュラー美術館の至宝 (2018)ライター2人の平均評価: 3
不遇の天才画家ゴッホをいち早く評価した女性の足跡
西洋美術史上最も重要な画家の一人とされる天才ゴッホは、しかしその存命中には大衆から見向きもされず、不遇な生涯を送ったことでも知られている。これは、そんなゴッホの絵画に早い時期から魅了され、個人コレクターとしては世界最大の300点にも及ぶゴッホ作品を収集し、ついには美術館まで建ててしまったオランダの女性資産家ヘレーネ・クレラ=ミュラーに焦点を当てたドキュメンタリーである。’18年にイタリアで開催されたゴッホの美術展に合わせて製作された映画とのことで、正直ゴッホについてもヘレーネについても掘り下げが十分とは言えないものの、日本ではあまり知られていない女性が題材ゆえに興味深い作品ではある。
ヘレーネの物語が知りたくなるドキュメンタリー
評価が定まりきらないゴッホの作品に早くから惚れ込んだ富豪女性ヘレーネ。さらにはブラスクやレジェ、ピカソやスーラらの現代アートを集め、美術館を作ったのだからコレクターの鏡だ。そんな彼女とゴッホの人生を交互に描くが、比重が大きいのはやはり画家! しかし、これといった新事実は明かされず、俄然ヘレーネの人となりに興味が湧く。そういう意味では彼女の人生の掘り下げが浅く、消化不良気味だ。見終わった時、ヘレーネについてもっと知りたいと思う結果になるのが監督の狙い? 案内人ヴァレリア・ブルーニ・デデスキの語りは知性を感じさせるだけでなく、ニュアンスたっぷり。ずっと聞いていたくなった。