読まれなかった小説 (2018):映画短評
読まれなかった小説 (2018)不条理な社会で生き辛さを抱えた親子の物語
舞台となるのはヨーロッパとアジアの境目にある古都チャナカレ。西欧的な洗練された文化と、時代遅れの保守的な慣習が共存するこの街に、現代トルコ社会の矛盾や不条理を映し出しつつ、世渡りの不器用な夢想家ゆえ社会に適応できず、挫折を味わい続ける父親と息子の姿が描かれる。善良なだけが取り柄のダメな父親を侮蔑する息子が、結局は父親だけが自分にとって真の理解者だと気付くことになる皮肉。理想とはほど遠い疲弊した社会で、どのように現実と折り合いをつけるべきかが問われる。3時間を超える長尺を感じさせない演出の力は、さすが巨匠ヌリ・ビルゲ・ジェイランだけのことはある。
この短評にはネタバレを含んでいます