嘘八百 京町ロワイヤル (2020):映画短評
嘘八百 京町ロワイヤル (2020)ライター3人の平均評価: 4
脇をイジって、主役さらに輝く
今では貴重となった助監督出身監督の特徴か。三池崇史や白石和彌しかり、武正晴監督も毎作、脇を固める俳優たちへの愛情が深い。結果、彼らの見せ場が増えたことで、騙し・騙されの攻防戦がダイナミックとなり、人情ドラマに厚みが増し、「嘘八百」のわちゃわちゃした世界がより魅力的になった。ただ坂田利夫師匠をはじめサブキャラが多少、演出や脚本から逸脱しても本筋からブレないのは、中井貴一&佐々木蔵之介という芸達者がいてこそ。娯楽を装いつつ、何気に役人の小賢しさをぶっ込んできた脚本家の職人技も光る。
やっぱり日本の大衆喜劇はこうでなくちゃ!
海千山千の金の亡者がうごめく骨董品業界を舞台に、才能はあっても世渡りの下手な古美術商・中井貴一と陶芸家・佐々木蔵之介のコンビが得意の贋作を駆使しながら、骨董品ビジネスを食い物にする不届き者の鼻をあかすという痛快コメディ・シリーズの第2弾。今回は父親の形見である貴重な茶碗を騙し取られた美女・広末涼子を助けるべく、テレビでの知名度を悪用するインチキな古美術商を成敗しようとする。負け犬ばかりの仲間たちを総動員して、劇場型詐欺を仕掛けていく過程は相変わらず面白く、かつての自分を彷彿とさせる若者・山田裕貴に自身の姿を反面教師として見せる佐々木のエピソードも心温まる。大衆喜劇はこうでなくちゃ。
だましもバカバカしさもパワーアップ!
ダビデとゴリアテの教訓に通じるコンゲームが痛快だった前作を踏襲する作りで、湧き上がる期待も裏切られない。真贋を問われるアイテムは、有名な織部の茶器で、趣味人じゃなくても楽しめる。しかも古物商と陶芸家の主役コンビが茶器を巡っての人助けに乗り出すのだから、「弱きを助け強きをくじく」図式に胸踊らないわけがない。コレクターに扮する外国人など“だまし”メンバーも増強され、仕掛けも大掛かり。しかも坂田利夫扮するよっちゃんの役回りなど、良い意味でのバカバカしさもあり、見る人の心理をつかんだ緩急のある脚本が絶妙。シリーズ第3弾をぜひとも作って欲しい。