フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて (2019):映画短評
フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて (2019)ライター2人の平均評価: 3.5
先が読めるとはいえ、チャーミングな成功物語
人気グループ<フィッシャーマンズ・フレンズ>のデビュー話にインスパイアされた人間賛歌だ。ロンドンのレコード会社重役と漁師たちの価値観の違いを浮き上がらせながら、身の丈感覚を大事にしながら生きることの大切さを教えてくれる。イギリス国家を所望されたグループが誇り高くコーンウォール・アンセムを歌う場面は物語の鍵となるが、ほかにもニヤリとするシーンが多々。個人的なお気に入りは、漁師たちと絆を培うべく漁船に乗り込もうとする主人公にユニークな漁師ジンクスが次々と伝授されるシーンだ。「なぜ?」と目が点なるジンクスもあるが、心に刻んだ。そして、ロケ地の美しい風景や漁師のピーコート姿にうっとり。
新たな価値観で「発見」される海の労働歌
実話物でドキュメンタルな手触りのある好篇。「1752年のロックンロール」と劇中で言及される伝統的な舟歌を合唱するコーンウォールの漁師バンドが男臭いゴツゴツした魅力を放つ。彼らがユニフォーム的に着用しているPコートって、そういえば英国海軍の軍服や漁師用の外套がルーツなんだよなと改めて思い至った。
ロンドンの音楽業界からやってくるダニーは、ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブの仕掛け人ニック・ゴールドを連想。彼は創作部分の多いキャラクターだそうで、ある種頑迷固陋なローカルコミュニティに仲間として溶け込んでいく過程が物語の柱となる。国歌ではなく地元のアンセムを歌う豪快な魂がバンド並びに映画の生命線だ。